東京藝大建築科を第一志望とする方については、基本的には、藝大の入試対策に集中していれば十分です。
藝大の入試の難易度が非常に高いため、これら私立美大2学科のための特別な入試対策は不要です。
以下は、武蔵野美大建築学科または多摩美大建築・環境デザイン学科を第一志望とする方を対象とした入試対策の説明です。
【武蔵野美術大学造形学部建築学科について】
武蔵野美大建築学科の一般選抜には、3種類の受験方式があります。
(1)一般方式
(2)共通テスト2教科+専門試験方式
(3)共通テスト3教科方式
この学科を第一志望とする方にお勧めするのは(1)一般方式です。
共通テストを利用する試験制度(2)(3)は、門戸が狭いため、出願時に注意が必要です。
特に、(2)は藝大建築科を、(3)は工学系の建築学科を第一志望にする受験生に利用されることの多い受験方式で、どちらも学科の得点水準が高いため、この学科を第一志望とする方にはあまりお勧めできません。
(1)一般方式の試験科目は、国語・英語と専門試験です。
専門試験は実技(B3判・鉛筆・3時間)または数学の一方を選択します。
入試結果を分析しますと、数学によほどの自信がある人以外は、実技試験を選択した方がよさそうです。
配点は国語100点・英語100点・専門試験200点で、計400点。
例年、合計点の7割5分あたり、つまり300点付近がボーダーラインになることが多いです。
また、国語・英語には単科基準点(足切り点)があるように見えます(が、公表されていません)。
公式サイトに過去問や出願倍率などが掲載されていますので、まずは学科試験の内容を見て、学力水準の目標を設定するべきかと思います。
→ 武蔵野美大の過去問
→ 武蔵野美大の入試統計
実技試験対策は、集中力の高い人/手先の器用な人であれば、約半年で足ります。
高3の夏期講習から始めれば翌年2月の入試に間に合う、と考えて構いません。
一方、集中力の低い人/根気の続かない人/手先の不器用な人/水平・垂直の感覚が悪い人(後述)は、実技習得に長い時間がかかります。
とはいえ、多くの場合は春期講習(高2の3月〜高3の4月)から始めればなんとか間に合うと思います。
【多摩美術大学美術学部建築・環境デザイン学科について】
多摩美大建築・環境デザイン学科の一般選抜にも、3種類の受験方式があります。
(1)一般方式
(2)共通テスト I 方式
(3)共通テスト II 方式
武蔵野美大同様、この学科を第一志望とする方にお勧めするのは(1)一般方式です。
共通テストを利用する受験制度(2)(3)への出願は、注意が必要です。
(1)一般方式の試験科目は、国語・英語と実技試験(B3判・鉛筆・5時間)です。
配点は国語100点・英語100点・実技試験300点で、計500点。
例年、合計点の7割強、つまり350点を少し上回る得点がボーダーラインになることが多いです。
また、国語・英語には単科基準点(足切り点)があるように見えます(が、公表されていません)。
公式サイトに過去問や出願倍率などが掲載されていますので、まずは学科試験の内容を見て、学力水準の目標を設定するべきかと思います。
→ 多摩美大の過去問
→ 多摩美大の入試統計
実技対策にかかる時間は、武蔵野美大対策と同程度です。
集中力の高い人/手先の器用な人は約半年、集中力の低い人/根気の続かない人/手先の不器用な人/水平・垂直の感覚が悪い人(後述)は1年程度かかると考えてください。
【実技試験対策について】
上述した2大学2学科の実技試験科目は、ともに「鉛筆デッサン」と名付けられていますが、これらの学科の入試実技は「デッサン」ではありません。
簡単に言うと、鉛筆を使ったイラストレーションです。
デッサンの習得にはモチーフ観察の技能が必要ですが、入試で観察力が求められているわけではありませんので、高度な静物デッサンの技能は不要です。
一方、建築分野に独特の「構成」について理解する必要があります。
予備校のデザイン科には「構成デッサン」と呼ばれる実技課題の分野がありますが、「デザイン分野の構成」と「建築分野の構成」は、内容が大きく違います。
予備校で「建築分野の構成」を指導するにあたっては建築科の講師が最適なので、当学院では(基礎科でなく)建築科の中で高2生〜高1生を指導しています。
(なお、デザイン系の学科と建築系の学科を併願する予定のある人は、基礎科からトレーニングをスタートした方がよいと思います)
上述したように、武蔵野美大と多摩美大の実技試験は、ともにB3判・鉛筆なのですが、制作時間と配点が違います。
武蔵野美大は3時間・200点、多摩美大は5時間・300点です。
武蔵野美大の方が制作時間が短いため、相対的にいうと実技の難易度が高いということになります。
また、多摩美大の方が実技の配点が大きいので、相対的にいうと実技のウェイトが高い(=学科のウェイトが低い)ということになります。
建築系の場合、私立美大専願者のほとんどが、(a)武蔵野美大と多摩美大の両方に出願するという実態があります。
そうした者の合否結果を見ると、(a1)両方に合格、(a2)武蔵野美大のみ合格、(a3)多摩美大のみ合格のうち、a1・a3 は多く、a2 は少ないです。
また、藝大建築科との併願状況を参照すると、(a)武蔵野美大と多摩美大の両方に出願する人が多く、次いで(b)武蔵野美大に出願し、多摩美大には出願しない人が続き、(c)多摩美大に出願し、武蔵野美大には出願しない人は非常に少ないです。
藝大志願者の(a)の中の合否結果を見ると、まずは a1 が一番多く、次いで a3 が多く、a2 は非常に少ないです。
藝大志願者の(a1)のうち、藝大が不合格となって私立美大に進学する者の動向を見ますと、一般に、武蔵野美大の方を選びます。
こうしたことから(結果的かつ相対的に)、建築系では武蔵野美大の方が人気が高く、入試の水準も武蔵野美大の方が高い、という実態があります。
さて、上述した武蔵野美大・多摩美大の実技対策の解説の中に「集中力の低い人/根気の続かない人/手先の不器用な人/水平・垂直の感覚が悪い人は、実技習得に長い時間がかかる」と書きました。
これについて具体的に説明します。
箇条書きにすると、以下のような傾向のある人のことです。
・高校の欠席や遅刻が多い
・宿題や苦手科目の勉強を先延ばしにする
・高校教員や親から何度も同じこと(注意)を指摘される
・長い文章を読もうとすると途中で飽きて別のことをやり始めてしまう
・努力が苦手で、難しいこと/辛いこと/苦しいことに立ち向かうことができない
・反復練習が苦手で、毎日コツコツと基礎訓練を積み上げていくことができない
・字が汚い/鉛筆や箸の持ち方が悪い
・包丁で、リンゴなどの皮を薄く剥くことができない
・折り紙や裁縫のような細かい作業が苦手
・壁に掛けられた時計やカレンダーなどが曲がっていることに気づかない
建築系学科の入試実技(立体および空間の描写)では、まず大前提として、形の正確さが求められます。
たとえば、平坦かつ水平な床の上に「一辺の長さが a である立方体」と「直径が a である球」を並べて描いたときに、その立体物の形と影の形が正確である、という技能が必要になります。
これは、静物デッサンを何百枚も繰り返しているうちに自然と身につく、といった感覚的な技能ではありません。
各種の透視図法を理解した上で「図としての正しさ」を目指していく制作態度がなければ、絶対に獲得できない技能です。
言ってみれば、感覚的な技能に対し、「論理的な技能」と呼ぶことのできる能力です。
この「論理的な技能」は、集中力が高く手先の器用な人には容易に獲得でき、そうでない人には獲得が非常に困難、という一般的な傾向があります。
ご自身の傾向を自覚した上で、実技トレーニングを始める時期を見極めてみてください。
その他、ご質問がありましたら建築科までお問い合わせください。
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