こんにちは!基礎科講師のFです!
実は先日、GWを挟んで長めのお休みを取らせてもらい、18日間台湾🇹🇼に行ってきました!
僕は学生時代にバックパッカーで東南アジアを一人旅して以来、海外の異文化に触れることに魅了されてしまい、これまでに17カ国を訪れました。🇹🇭🇱🇦🇻🇳🇰🇭🇹🇼🇰🇷🇲🇴🇭🇰🇦🇪🇲🇽🇮🇹🇫🇷🇪🇸🇩🇪🇳🇱🇧🇪🇬🇷(世界一周にはまだまだ程遠い、、、)
そして、いくつかの国ではアーティストとしての活動も絡めた滞在をしてきました。
アーティストとして海外に行くシチュエーションとしては、アーティストインレジデンス(滞在制作施設など)やアートシンポジウム、国際交流を兼ねたアートプロジェクト、アートフェアに参加したりと様々ですが、今回は台湾の芸術大学にVisiting artistとして招いていただきました👏
僕の場合は、オープンコール(公募)に応募して参加するという経験があまりありません。
アーティストとして同じような動き方をしている知人などの紹介で声をかけてもらうことが多く、今回もかなり特殊なケースなので、参考にはならないかもしれませんが、これから美術を志すみなさんの中にも海外に興味があるという人も少なくないかと思うので、一つの例として楽しんでもらえたら嬉しいです。
それではいきます!
なんとなくイメージがあるかと思いますが、台湾は東京(成田)から飛行機で約2時間半で行けるほど、近くの外国です。
しかも日本最西端の与那国島なんかは台湾のすぐ横!東京〜富士山の距離よりも近いです。天気がいいと見えるらしい!
今回の滞在では、工芸科昼間部講師で漆作家でもあるW先生と共に現地の学生に向けてそれぞれレクチャーやワークショップを行ってきました。
滞在中のほとんどの時間を首都の台北ではなく、台南(古都、日本の京都的なエリア)にある国立台南芸術大学で過ごしていました。
台南芸大にVisiting artistとして招待してもらうまでの経緯としては、
昨年、台湾で行われた日本人女性作家を集めたマーケットイベントにW先生がグループで参加した際、同じメンバーの陶芸家が台南芸大に留学しており、大学内を案内してくれたことがきっかけでした。
その時、台南芸大の(日本で言う)大学院の木工研究室の教授(日本人)と知り合い、木工研究所室の学生に漆を教えてほしいということで、W先生の招待が決まりました。
そして、僕が過去に木材を使った屋外彫刻を制作していたり、現在木工家具を制作していることもあり、W先生の紹介で僕も合わせてVisiting artistとして招いていただけることとなりました。
↑大学3年生、休学中にオランダ、デルフトで彫刻シンポジウムに参加した際の作品。
↑オリジナルでデザインした自分用のデスク。家具、展示用の什器の制作などもしている。
今回の滞在の条件は元々の予算が1名分だったため、追加となった僕の分の渡航費は自己負担でした。宿は2名分確保していただけたので、非常にありがたかったです。
台湾に行ける!!というだけで僕にとってはご褒美なので、
・台湾への渡航費が往復で約4万円と安い
・滞在費無料
・Visiting artistという現地での肩書き
・台湾にアート関係の知り合い(友達)ができる
・現地の人に案内してもらえる
・研究室の木工機材を使って試作できる
という点を考えると圧倒的にプラスだなと判断しました。
アート関係のプロジェクト(特に若手が参加しやすい小規模なもの)は予算が厳しめなので、金銭以外での条件を見て自分にメリットがあるかを見極めるのが大事かと思います。
僕は若いうちは経験が大事だ!という考えなので、声がかかったものはなるべく参加しようというスタンスですが、時々失敗したなと思うこともあります。
結果的に今回の滞在は、これまでにないぐらい濃密で得るものも多い滞在となりました👍
数年前に知り合った海外の友人から数年ぶりに連絡が来て、一緒のプロジェクトに参加する。なんてこともあったりするし、全く別の土地でばったり会ったりもします。
そんな時、人生のドラマチックさに震えて、改めて海を越えて活動をすることの面白さを実感しますね〜。
ということでお待ちかね、滞在の様子です!
↑滞在場所。講師として呼ばれているだけあって広々した素敵な部屋でした。これがなんと大学の敷地内にあります。大学自体が街から離れたところにあるため、学生の多くも大学内の寮で生活しているそうです。
↑W先生の漆のワークショップの様子。繊細な作業が多いので、皆食い入るように見ています。日本の学生よりも質問が次々と出てきて、積極的で興味深々な感じでした。
木工だけでなく陶芸の生徒もたくさんきています。ちなみに台湾で陶芸を学ぶ大学として一番有名なのが台南芸大らしいです。
↑漆の3つの技法を3週にわたって説明していました。日本語で説明し、通訳さんが中国語に訳してくれていました。
↑これはレクチャーの様子。僕のこれまでの作品や経歴について話させてもらいました。大学を出た後のサバイバルの仕方はどこの国でも皆関心がありますね。絶賛試行錯誤中です。
初めは英語で頑張って説明していたのですが、途中から通訳さんに助けてもらいました。作品についての説明などはまだまだ英語を勉強しないとなと改めて痛感しました。
↑滞在中のミッションの一つとして、なるべく工房で制作をしていてほしい。と言われていたので、僕はひたすら「ろくろ(木工旋盤)」と呼ばれる木材を回転させ、そこにノミを当てて削る機械でひたすらに木を削っていました。
東京芸大彫刻科に在籍していた頃は、ろくろを使う機会がなかったので、ここで初めて触る機材でした。製材された木材だけでなく、大学内で切られた幹を拾ってきてそれを加工したりもしました。虫食いの跡がかっこいいんです。(写真右)
木はそのものが生きている有機物であるということもあり、温かい質感や生命感を表現しやすい一方で、シャープさを出すのはコツがいるなと感じています。どうしても細く華奢になってしまいやすい。ですが旋盤を使うとボリューム感を残しながらシャープさを出すことができる加工法だなという印象でした。
↑最後の成果発表。薪のように縦に割った木材を縛って束ねた状態で削り、後から顔料(絵の具の元となる色の粉)を混ぜた接着剤で張り合わせたものを何パターンか試作しました。
異素材を掛け合わせたり。色の要素を足すことが木工研究室の学生には新鮮に感じてもらえたようでした。
今回の滞在では僕はアーティストというより、木工作家として制作をしていました。これは、僕はアーティストマインドになると、途端に観察、考察ばかりしてしまい、手が動かなくなってしまうためです。
↑近目だとこんな感じ。
↑木工研究室の生徒たちのスタジオビジット(制作場所を訪れること)をしているところ。
↑制作途中の作品を毎回この棚にしまっているみたいです。
↑実際に制作している様子。
↑同じく他生徒の制作の様子。木を曲げる装置を自作していました。
↑彼は台湾の原住民で山を歩くときに使うナイフを自作しているらしいです。お父さんから譲り受けたものなど、色々見せてくれました!!
めちゃオシャレなんだ、、、
↑こちら、W先生が成果発表で行ったインスタレーション。大学内に流れる川にかかっている石橋にオレンジ色の小さな花を敷き詰め、金継ぎ(漆を使って割れた陶器などをつなぐ技法)に見立てたもの。
あちらとこちら、彼岸と此岸、あなたとわたしなど対立するもの同士をつなぐという、金継ぎの概念を拡張した作品です。ふかふかとした花の上を歩いて、橋を渡ることができます。
正直、悔しいぐらいいい作品でした。
↑橋の真ん中には、敷き詰めた花と同じ木になる実の殻を漆で繋ぎ合わせて小さな壁を作り、裏側(実の内側)には「What do we see?(何がみえる?)」と書いてあります。
ここまでがワークショップとレクチャー、制作の様子でした!
大学にアーティストを招待するという今回の制度は、アーティスト側も経験やキャリアを積むことができるし、学生としても大学卒業後に活動している人と直接関われる機会として非常に良いシステムだなと感じました。
日本と台湾は距離的にも近いため、行き来しながら活動しているアーティストも肌感覚で増えているように感じます。世界で見ると「アジア」と一括りにされてしまうことも多いですが、全く違う文化も多くあります。
文化の違いをより強く感じるのに手っ取り早いのが、現地の人に案内してもらい衣食住を体感することです。
つくるだけが滞在制作ではありません!
ローカル台湾グルメや原住民の村、夜市、立ち寄ったアートギャラリーなどを-番外編-にてご紹介したいなと思います!
ここまで読んでくださりありがとうございました!
「台湾滞在記🇹🇼 -番外編-」もお楽しみに〜
2024年6月21日(金)〔基礎科〕