基礎科土日・日曜クラス 専門自由課題「いきものをテーマに作品を作ろう!」

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平日クラスに引き続き、土日・日曜クラスも「いきもの」がテーマの専門自由課題を終えました!

「いきもの」と一口に言っても、様々なアプローチの仕方があります。自分ちのペットの絵を描く、想像上の生き物を描く、粘土で写実的に小さな生き物を再現する、カバのための歯間ブラシを作る(!?)……。この自由課題は「作りたいもの」に対しての制約はありません。それを「どう実現するか」を私たち講師は手助けできればいいなと思いながら見守っていました。初めての技法も使いながら取り組んだ2週間の制作が、各生徒がじつは既に作家であるという自覚を強めてくれたのではないかと思います。

    

そして講評へ!!ざっと全作品の紹介をしていきます。

『うし』「牛肉を描きました。背景は牛柄です」

今回の課題では、作品タイトルと制作のモチーフや意図を説明してもらうためのコンセプトシートを描いてもらいました。シンプルに説明するのか、メタ的視点から説明するのかといったところも鑑賞体験に影響を与えますね。このお肉の作品は、作者がお肉大好きだから描かれたそうです。「タンだよね?」と話題に。

『意味』「私たちが生きていられるのは、弱肉強食のこの世界で、頂点にいるからで、どこかで、死があるからこそ生がある。命は美しいものだけど、生きる意味は残酷なものなのかもしれない。」

生を支える死の存在にまで目をむけている作品。ネズミが今にも捕食されそうですが鳥のほうも死の象徴のような骸骨なので、いま生きているものたちも死んでいったものから作られていると言えるかもしれない…といった思考まで導かれます。上から絵具を垂らしたり、荒々しいタッチで地面を表現したりという実験的な側面もいいですね。

『いぬchan』「自分の家で飼っている元気な犬の雰囲気を出しました。特に目がもうすごく可愛いので星を入れました。何か食べてるとこんな感じで期待した視線を送ってきます。庭で収穫したサツマイモを勝手に拾って生のまま食べようとするような少し抜けているところを1つ色の違うNで表現しました。可愛いよね。」

家で飼っている犬に餌をやっている時の表情をとらえた作品。省略と描きこみのバランス、背景の「INU」のNがひとつだけ切り取られているなど、にくいなー!と思える演出がそこかしこにあります。物欲しそうにしている可愛らしい眼が生命感に溢れています。ベロのトゥルッと感もいいですね。

『子育て』「鳥が自分の雛に餌をやっているところを描きたかった。」

幾何学図形に近い形態で親鳥、雛、餌のイモムシや森の様子を上手に構成しています。シンプルな形ながら、雛の口元の形など特徴の違いを少しずつ出している仕事が非常に丁寧で良いと思います。マスキングの仕事も丁寧でした。

『クジラの親子』「レジンを使ってみたいと思い海の生き物であるクジラを作りました。」

非常に完成度が高く、講師一同感心させられた作品です。水中を表現しているレジンは気泡をわざと混ぜるのに対して上の層は綺麗に仕上げたり、暗い箱の中に展示してライトアップすることでまるで夕方の海で雄大に泳いでいるような雰囲気を見事に捉えていると思います。いろんな角度から何度でも見たくなる作品になったのではないでしょうか。「大きな作品のマケット(模型)のようにも見えるね」との感想も講師から聞かれました。

『井戸端貝議』「波打ち際で貝たちが話している様子を作りました。」

貝の生々しさ、砂浜で色々なストーリーが起こっている様子を作り上げています。貝のつるんとした質感、濡れた砂なども粘土の素材を工夫して非常にリアルに作っていたり、波打ち際の砂浜の描写を絵具で行っていたりしてとても見応えがあります。でも作者は特に貝が好きなわけではないんだとか。タイトルの一捻りもクスッと笑わせられ、鑑賞者を引き込む力になっています。

『Flown Penguins』「鑑賞において、対象の本質はしばしば無視され、我々の意見が押しつけられる。彼らは、本当に空を飛んだのではなく、これを鑑賞した人間のあなたによって飛ばされただけである。」

夏を感じさせる爽やかな青の色幅に陶酔させられていたら、コンセプト文はとても鑑賞という行為に自覚的なもので、ハッとさせられます。ペンギンのお腹の微妙なグレーの色調の作り方や水面を水中から見上げたときの風景が平面的になった映り込みなど、作者のとても繊細な目を随所に感じます。透明水彩と不透明な白(アクリルガッシュ)の使い分けも良いですね。

『海虎』「おこぜを漢字で書くと『海虎』と書くのを知ってそれを形にしたいと思いました。」

昔の人はオコゼが虎のように怖い生き物に見えたんでしょうか。想像で虎の形態にオコゼの特徴的なヒレを付けつつ、画面中のライティング(光源の設定)もしっかりと行っていて素晴らしいです。顔のあたりに視線がいくようにコントラストを高くしたり、目立たないところは目立たないなりに他とは違う色調の青にしたりと気を遣っている要素がうまく活きています。

『まるちゃんとゲンちゃん』「飼っているインコです。かわいいシーンがあったのでそこを描きました。」

作者とインコの親密な関係まで想像させる描写にできていると思います。モチーフの明るい場所がぶつかるところは背景を暗く、手など暗く落とし込んでいるところは明るい背景をぶつけるという操作がアドバイスしないでもできていて感心させられました。インコの影の中もとても豊かな色幅で描けていて、優しく眠るインコの体温も感じさせられます。

『ウミウシ』「ウミウシの綺麗な色と透明感を描きたくて、薄く塗りました。」

油彩絵具の質感の使い分けがとても素敵な一枚です。エメラルドグリーンの薄塗りで透明感を作りつつ、背景のダークブルーや岩の色の不透明感との対比によって相互が引き立っています。フチの白っぽいところも丁寧に陰影を捉えていて、緩やかに流れる海水に対抗しているウミウシの動きが想像できます。

『罪なき悪役』「なぜゴキブリにしたかというと、『生き物』を題材とした作品のモチーフで、あまり描かれなさそうだと思ったからです。確かにゴキブリは気色悪いですが、立場を変えてみたらとてもかわいそうな生き物だと思ったので、描いてあげました。」

確かにそうですね〜。ゴキブリは必死に生きているだけなのに、私たち人間は気持ち悪いと思ってしまう…。彫刻科のアトリエにいるアヒルが奥にのぞいて見えます。鉛筆とアヒルによって追いやれてしまったゴキブリの視点に立たされる作品です。水道の下の収納スペースを利用して展示していて、展示の仕方にもひと工夫が見られます。

絵具の描写やコラージュで様々な生き物を一画面に集結させた作品。ぱっと見は木の幹に鮮やかな模様の蛾がいるだけと思ったら、よく見るとミミズクがウロの中に隠れていたり、ヤモリや他の蛾、本物の葉っぱがコラージュされていたりと非常に工夫の多い一枚になっています。木の質感も、実際の小枝を削り取ってコラージュしています。茶色の中に豊かな色幅が作られています。

子供と戯れるトラの赤ちゃん。デッサンで丁寧に仕上げています。二匹の虎のうち、下にいるのが通常の色の虎、上はホワイトタイガーの赤ちゃんですが、その固有色の差も意識して仕事ができています。子供の上半身と下半身のつながりを描き出しの段階でもう一度確認できるとよかったですね。子供の優しい表情、虎のリラックスした視線は資料にしている写真を超えて自分のイメージからしっかりと表現できた要素だと思います。

『カバの糸ようじ』「カバは口の大きさで競う習慣があるそうです。つまり口が開けば開くほど強くかっこいいということ。しかし虫歯ができてしまったら恥ずかしいですよね〜。なので、歯を磨いたらしっかり糸ようじもしましょう!」

壁に貼ってある広告のようなものまでしっかりとコンセプトを練ってある作品。一本880円(税込)です。このような要素も作品の一部として完成度高く仕上げてもらえると、見ているこちら側もクスリと笑えます。カバは見た感じ糸ようじを使える歯が少なそうだな…と気付いてからもなんだかコンセプトのユーモアさと作者の視線にほっこりします。

『いきもの』「いきものという言葉に私が持つイメージを絵にしました。胎児です。」

一見、人の胎児のように見えますが、資料としては象や他の動物の胎児も集めていたり、下半身にあたるところがなんだか溶け込んでいたり…と可能性を連想させる一枚です。油彩のウェット・オン・ウェット(またはアラ・プリマ=乾いていない絵具の上から塗り重ねることによって画面上で混色する技法)を使って目まぐるしく成長していく得体のしれない生命の始まりの形態を捉えられています。

『雨の日』「顔を洗っている飼い猫が可愛かったので描きました。」

こちらの油彩も爽やかな透明感のある背景の青と手前の猫の不透明な白の色幅が気持ちの良い一枚です。一見普通に描いているだけに見えますが、視線を集めるためのコントラストを顔と右前脚のあたりに集中させるといった気遣いがしっかりとされていて安心してみていられます。最近は雨続きだから『雨の日』なのかな…パラパラとした雨音と通奏低音が聞こえてきそうなしっとりとした背景の色調が目立たないけれど味を出している脇役として成功していると思います。

作品の紹介は以上になります。最後に改めてみんなの作品を並べてみると、もちろん「自分の作品は終わらなかったな」と思った人もいるかもしれませんが、展示されている部屋の空間全体がいつものデッサンの時などとは比べ物にならないくらいバイブスが響いていて元気をもらいました。一応「いきもの」というテーマがある課題ですが、自分のコンセプトで作品をスタートさせると各人の趣味趣向、普段から熱い眼差しをむけているものなどがぼんやりと見えてきて頼もしかったです。今月下旬から夏季講習がスタートしますが、この2週間で感じていたような独特の産みの苦しみや技法上での発見などをしっかりと脳の片隅にしまっておいて欲しいです。きっと近い将来に良い影響を与えてくれることと信じています。

2021年7月4日(日)〔基礎科