東京藝術大学美術学部建築科は、一次試験と二次試験のすべてについて、配点比率を公表していません。基準点(いわゆる「足切り点」)があるのかどうかも公表していません(註1)。同大学の2024年度入試の『学生募集要項』には、「個別学力検査等の成績に、大学入学共通テストの成績と出願書類)調査書等)の審査を加え、総合的に判定し、合否を決定する」と記されているのみです。したがって「何点以下だと絶対に落ちる」といったことは言えませんし、同様に「何点以上取れば安心」ということもありません。
同大学の発行する『個人成績開示』に記載された情報をみると、大学入学共通テストの「成績」欄には合計点のみが記されており、「判定基準等」には何も記載されていません。ですので、単科基準点は設定されておらず、5教科6科目の合計点だけを見ている、と捉えるのが妥当でしょう。
センター試験当時、同科の合格者の得点分布をみたときにもっとも多い(密集している)得点率は7割前後であろうと分析していました。センター試験が廃止され、共通テストが始まると、およそ1割ほど下がったように見受けられます。現在は6割前後の得点率の者が多いようです。この「6割」という数字は、ボーダーラインや安全圏という意味ではありません。5割そこそこの得点で合格した人がいる一方、9割以上得点して不合格となった人もいます(註2)。
当科では、「浪人生は勉強する時間があるんだから7割超えを目指そう」「現役生は、総合点を稼ぐための勉強方法に専念しよう」「得意科目の得点をさらに伸ばそうとするより、苦手科目をなくすほうが総合点は上がる」といった話をすることがあります。藝大建築科が配点比率を公表していない以上、こんな話をしても安心材料にはなりませんが、そうだったとしても、受験生は、個々に具体的な目標値を設定するべきだと思います。
なお、当学院は、学科の授業も設けています。詳しくはこちらをご覧ください。
註1)藝大建築科の某教員がYouTubeに掲載された公式動画の中で「足切り点はない」と断言した過去がある。しかしその動画が削除されたため、基準点がないものと結論づけてはならない。たとえば、空間構成と総合表現の評価だけを見たときに合格/不合格のボーダーラインが明瞭でないという年があったなら、その年に関しては共通テストの点に基準点を設けて合理的に評価作業を進める可能性はある。
註2)他の予備校の生徒からの伝聞による。
2024年4月1日(月)〔建築FAQ〕