こんにちは、基礎科です!
三学期2課題目は全専攻コースで共通の静物モチーフ(全6種類)をデッサンしました!
今回は全専攻コースの優秀作品をご紹介します!
3学期になりますともうすぐ受験生になる高校2年生は、デッサンも専攻コースの専門性が高くなってきています。
同じモチーフを各生徒はどのように描いているのか比べてみるとそれぞれの特色がとても分かりやすいと思います。
作品コメントは、各専攻科担当講師です。
◯デザインコース
デザイン科は、芸大サイズ(東京藝大デザイン科入試で出題される画面サイズで木炭紙判サイズより少し大きくなります)でM画用紙にてデッサンをしています。デザイン科では、画面全体で見えてくる空間や調子の自然さが求められます。
それぞれのモチーフの質感表現を自然でありながら密度高く描けており、見応えのあるデッサンになっています。
石膏像の印象がバッチリ捉えられている上に、像の角張っている所や欠けた表情の石膏質が映えて見えているのが良いです!
モチーフの固有色がしっかり乗っているのでモノとしての形体感が強く見えて良いです。また、床をひと繋がりの面として捉えてしっかり描き込めている点も良いです。
絵の中の光の向きや強さをを明確に設定できていてかっこいい仕上がりになっています!色味もピッタリと当てはまっていて自然な印象になっています。
空間を自然かつ綺麗に描けています。奥から抜けてくる空気や光を感じられる心地いいデッサンです!エンジンの質感の描き込みも良い感じです。
かっこいい!迫力のある一枚です。馬頭特有の派手な質感を十分に描き起こせています。光の当たり方のイメージも良いですね。
質感の描写が上手です。タッチの方向やピッチを場所ごとの雰囲気に合わせて変えているので絵が複雑に見えて良いです。
モチーフの中の光が当たる箇所を絞って描けており、形や構造が分かりやすいです。布の折り込みや手前の肩の張りがとても見やすいです!!
空間を綺麗に描けていますね。ものの前後感が分かりやすく、抜けが美しいです。固有色も綺麗に描けています。
◯工芸コース
工芸科は木炭紙サイズの白象紙に鉛筆デッサンをしています。すいどーばたの工芸科では、藝大入試本番と同じように板に水張りをしてデッサンをしています。白象紙はデザイン科で使用しているM画用紙と比べると平滑で質の異なる用紙になるため鉛筆の使い方も違ってきます。工芸科は立体や実材素材を扱う科なので、空間や立体感・形態感、質感の観察など拘りたいですね。
背景つきの見応えのあるデッサンです。良い空間のイメージで描けていますね。絵の中の明度の配分の計画が上手です。
明瞭に見えてほしいポイントである籠の編み目の描き込みをしっかり抑えつつ、それに対する他のモチーフの見え方が調整できています。バランスの良いデッサンです。
◯彫刻コース
彫刻科は木炭で専用紙である木炭紙にデッサンをします。
構造や面、空間の意識を彫刻科では大切にしています。序盤から豊富にのせた木炭をやりとりする事で形態を確実に掴み、抜け目の無い厚みのある画面にしたいですね。
石膏と石膏の間の空間をよく捉えられていますね!木炭の調子も幅広く魅力的な画面です!
絵全体の雰囲気が良く、自然にビニールの質感や部屋の光源状態が描けています!目を惹きますね!
堂々と画面に収まっていてインパクトのあるデッサンに仕上がりましたね!いろんなチャレンジが画面に見えます。
画面の空間がすっきり自然に描けていますね!ビニールの反射もかなり良くなってきました!
馬頭のゴツゴツとした印象や、ねじれが格好良く描けていますね!色幅もいいですね!
◯日本画コース
日本画科も工芸科と同じく白象紙に鉛筆デッサンになります。今回は木炭紙サイズ、それよりも縦長でサイズが大きくなるP20サイズ(着彩用のサイズです)、それぞれで描いている人がいます。日本画科では自然な空気感と緻密な描写を意識しながら制作しています。
逆光によるモチーフ同士の色の変化がよく捉えられていますね!少し客観的な構図になっており、静的な印象と冷静に陰影を捉えた表現が絵の独特な雰囲気を作っています。
モチーフ自体の複雑で密度の高い印象をしっかりと描写しながら、背景を付けてパーテーションに落ちる影も表現している力作です!手前の狐のお面のリアリティが絵全体の魅力につながっています。お面に当たる劇的な光の印象が、モチーフ全体に当たる光を増しています。
日本画科はよく描写する/できる一方で全体感が弱くなりやすい人が多いですが、描写はさることながら大きな組みモチーフの印象もしっかりと捉えられています!縄の激しい色の変化がこの印象を出すのに大きく貢献しています。
シンプルで、“ザ・静物デッサン“というモチーフです。シンプルなモチーフだからこそ一つ一つの物の“らしさ“に迫った描写が絵の魅力になっていますね。特にメインの籠の描写と立体感の表現が抜群です!
日本画らしい丁寧な描写により、モチーフの繊細な印象がよく表現されていますね!色幅が広く、描写がしっかりと“物“としてまとまっているので好印象につながっています。布の立体感とリボンの繊細さとの対比が魅力的ですね。
◯油画コース
油画科は、木炭紙に木炭や鉛筆等を使い表現をします。
(募集要項によると23年度の芸大入試の用紙は45×60cmの木炭紙です)
油画科では出題やモチーフをどう見るか?どう描くか?といった個人の発想力や表現力が問われています。
こちらの作品はカゴの縁をクローズアップして描いた作品ですね。一見何を描いているかわかりませんが、丁寧な観察描写によりハッと気付かされるような良さがありますね。カゴに入ったフランスパンも距離感を表現しつつよく描けています。
光の設定を強い逆光にしているので、印象深い色彩の作品になりました。背景に窓や人影のような物があったり、瓶や水差しをあえて線で表現しているので時間の経過までも感じさせるような仕上がりになっています。
流動的な良いタッチ。物の省略の仕方がうまいです。構図のバランスや色彩も綺麗ですが、りんごの観察がもっと入るといいですね。油の作品も見てみたくなるようなデッサンです。
光の印象と勢いのあるタッチが魅力的ですね。実はこちらの作品は2時間で描きあげたもの。おそらく、時間がたっぷりあったらこの勢いは生まれなかったのではないでしょうか。時間をかければいい作品が生まれるわけではありません。絵をいいところで止める判断をすることはとても難しいですが、重要です。
りんごを絵の主役にした作品です。敷いてある布も含めた、もの一つ一つの質感が丁寧に描き分けられています。光の入れ方から、画面外がどのような環境なのか考えさせられますね。
目線を低く設定しているので、静物がまるで大きな建造物のように見えて面白いですね!かごの量感が素晴らしいです。背景の描写も勢いがありますが、リアルですね。りんごは簡単そうに見えて意外と描くのが難しいモチーフです。毎回しっかりと観察しておいしそうに描けるといいですね。
シンプルな構図ですが、実在感のあるデッサンですね。かごとガラスの質感の対比がよく描けています。
しっかりと観察したことが伝わりますね。炭もしっとりとしていていい感じです。
この作品はかなり自分の世界観の中に静物を引き摺り込んでいますね。しかし、モチーフひとつひとつの観察描写ができているので完成度が高くなっています。描くものの面白さだけではなく、構図、色の配置や黒の溜め方がうまいので見やすいです。
次は、石膏の馬頭にビニールシートが被せられたモチーフです。
馬頭の口元をクローズアップして描いた作品です。何を描くときもそうですが、モチーフを大きく入れれば入れるほど描写しなければならないところが増えます。この作品は石膏の質感、傷やヒビを一つひとつ丁寧に描けているのでこの構図でも説得力がありますね。また空間をとても感じることができて素晴らしいと思います。
静物が配置された空間に焦点を当てた作品ですね。バチッとした黒と白の対比が印象的で目を引きます。簡略化の仕方もうまいですね。パーテーションに落ちる影がかっこいいです。
最後に、ドライフラワーやホースが生けられた壺の静物です。
色彩の対比でモチーフがうまく表現できています。背景のアトリエの様子の描写も巧みですね。引っ掻いたような跡や線、また一見荒々しく見えるタッチによってその場の空気感や振動までもが伝わってきますね。
背景がほぼ白抜きですが、影を描くことによってドライフラワーが壁に触れていることを表現しています。ささやかですが、美しい着眼点ですね。その影の描写もとても丁寧で、まるで自然光に照らされているかのような印象が持てます。
きつねがこっちを見てますね。空間設定を工夫し実際にない要素を入れることで、鑑賞者に物語を想像させるような絵作りができています。この後に何が起こるのか気になる作品です。
壺の飾りを描いたデッサン。物を見るときにピントが合う感覚をグレーの中でうまく表現できています。縞模様の布は強い対比を置きがちですが、じんわりと暗く染まっていくような描写が秀逸です。
油画コースは以上です!講評会で絵を並べると色が濁ってしまったような作品はほとんど無く、みなさんが受験生になる準備がしっかりできているな、と感じています。高校三年生になったら構成課題や文章課題が今よりもさらに増えると思いますが、静物デッサンはいつでも基本です。今のうちに深く観察する癖をしっかりつけましょう!
◯デッサンコース
デッサンコースは専攻科選択にまだ迷っている人が所属しています。
候補の専攻科それぞれの実技を体験することができます。
油画と彫刻は木炭デッサン、それ以外は鉛筆デッサンとなります。
バスケットの細かい様子まで描写できていて、画面のメインが充実しています。質感表現もよく観察して描けています。
モチーフ毎の形どりが丁寧で、質感の特徴をよく捉えられています。木目の描写が立体表現と両立できていて、全体の完成度が高いです。
以上です。体調に気をつけて、残り少ない課題も頑張りましょう〜!
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基礎科は3月5日をもって2022年度全クラスの授業が終業となります。
春季講習会は3月26日から始まります。
23年度、新高校1年・2年生の皆さんは基礎科のコースにご参加ください。
新高校3年生の皆さんは、春季講習会から受験生となるので受験科である各専攻科の受講となります。
これから美大受験勉強を始めたい!という未経験者や初心者の皆様、3月19日に「春季体験入学」を開催します。専門性の高い各科講師陣が、実技指導は勿論、芸大美大受験進路相談の面談も行います。また保護者様向け藝大美大進学説明会も同時開催致します。是非ご参加ください!
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2023年 基礎科の新年度始業
4月9日より各クラス順次スタートします。
高校1年生のみんなは引き続き基礎科で実力をつけていきましょう!
2023年2月18日(土)〔基礎科〕