先端芸術表現科 2024

M.Fさん

合格大学:
東京藝術大学 美術学部 先端芸術表現科

多摩美術大学 メディア情報学科メディア芸術コース
日本芸術大学 映画学科 表現理論コース

出身校:都立井草高等学校

 

 私は元々、高二の夏からどばたのデザイン科に通っていましたが、高三の春に先端芸術表現科に志望先を変え、どばた先端の金土日コースに通い始めました。現役時代は1次を通過し二次まで漕ぎ着けたものの、結果は補欠候補という形で不合格、その後浪人1年を経てようやく合格しました。

 現役で落ちたあとすぐは、もう一度先端を受けようという気持ちはありませんでした。ポートフォリオにはかなり力を入れていたので、翌年それを超える作品制作が行える気がしなかったからです。また、そもそも自分が本当にやりたいことも分からなくなっていて、大学受験そのものに意欲を失っていました。そこで私は、とりあえず1度受験から離れて好きなことだけをやってみることにしました。バイトをして車の免許合宿にいったり、ずっとやりたかったlive2dやCGソフトなんかを試してみたり、夏には、大学貯金から切り崩して、ドイツの映画学校へ夏季留学したり…とにかく受験の抑圧で出来なかったことを全てやり、かなり充実した毎日を送っていました。様々な人に出会い、新しい景色を見て、沢山美術館に通う。今思うと、この経験が1番その後に生きていると思います。 

 浪人生活を経て得た1番の発見は、案外作品制作は自分に素直に楽しく作っていい、という事です。私は現役時代、”先端らしい”作品を作ろうと必死でした。合格作品を沢山参考にして、ポートフォリオ映えするように、そしてとにかく作品数を増やすために、自分でも咀嚼しきれてないアイデアも手当たり次第作品にしていました。しかし、それは自分を追い詰めて、考える時間や自信をなくしてしまう行為でした。浪人中は所謂”受験用”の作品を作ろうとせず、自分のやりたい事をやり、作りたい作品だけを作る、もう合否は気にせず好きなようにやろうと吹っ切れた状態で作品制作を行っていました。それで良かったんだと合格した今になって思います。 

 先端の受験対策は十人十色で、それぞれ大きく異なります。私がここまで話した体験記もその中の一つにすぎません。勿論、沢山手を動かすことが合っている人も、合格作品を参考に自分のオリジナリティを出して行ける人もいると思います。ただ、もし浪人中の私のように、”先端っぽい作品制作をしなきゃ!”と自分で自分を追い詰めてしまっていて、それに悩んでいる人がいたら、もしかしたら1度制作から離れて、自分は本当は何が好きなのか、何がしたいのかを探しに行ってみるのもアリかもしれません。 

 辛いことも沢山あると思いますが、楽しむ心を忘れずに頑張ってください!大学で皆さんの作品を見れるのを楽しみにしています!

N.Yさん

合格大学:
東京藝術大学 美術学部 先端芸術表現科
武蔵野美術大学 基礎デザイン科

出身校:九州産業大学付属九州高等学校

 

 私は高校生の時すいどーばたの講習会にのみ参加し、浪人してから地元を離れ池袋の本校に入学しました。

 現役で一次落ちと知った当日は、納得して涙も出ませんでした。試験で描いたデッサンはいい出来だったと自己暗示すらできないものでしたし、提出した個人資料ファイルもついかっこよく繕おうとする文章で作られていたからです。悔しいとも思えないことが悲しくて、上京した後もじわじわと長い間落ち込んでいました。浪人中の一学期間は毎日不安で進路を変えることも検討していました。

 そんな私が自分の目標にまっすぐ向かえるようになったのは簡単なことのように聞こえるかもしれませんが、予備校に通い続けたからだと思います。アトリエへ赴き講師の方や他の受験生と話したり講評を受けたりする中で、そこにいる人たちの思考や作品がやっぱりかっこいいなあと思わずにはいられなかったのです。そう思った感覚は曖昧だけれど本物で、そこに自分の熱望する何かがある予感がしました。そして後はこの方向にどんどん進もう!と覚悟を決めることができました。

 受験生期間で一番成長を感じた瞬間は自分に素直な作品を作れた時です。作品制作において、正直私は何かを作ることが楽しくてしょうがないというタイプではありません。けれどそのような楽しさとは別に、確実に夢中になってしまっている自分がいます。それは私が制作の時、普段は表に出しきれない飾らずひたすらに素直な思いや考えを形にできるからだと思っています。制作が一番苦しいと感じていた時は自分を明るい人間に見せよう、いい話にしようとしていました。それを辞めて一度自分の根っこにある素朴な心の動き、それまでつまらないと切り捨てていた部分を観察した時にようやくこれでいいんだと苦しさから抜け出すことができました。

 一人暮らしと予備校とアルバイトで目まぐるしかったけれど、この浪人の時間があってよかったと心から思います。そう思えたのはどんな時も生徒の私と真剣に向き合ってくださった講師の方々がいてくださったからこそです。1年前は出来なかったことが沢山の人に支えられて出来るようになりました。関わってくれた全ての人たちに感謝しています。ありがとうございました。

U.Iさん

合格大学:東京藝術大学 美術学部 先端芸術表現科

出身校:大阪教育大学附属高校平野校舎

 

 私は1年浪人して、先端芸術表現科に合格しました。

 高校3年生の春からオンライン生となり、夏と入直では現地に通いました。浪人になってからは、夏まで宅浪、夏期講習では他の予備校、秋から冬にかけては地元の画塾、そして冬から入直期間でどばたに戻ってきました。 このように複数の人の意見に触れることが多かったため、教えてもらうことに違いが生まれ、どうすればいいんだー!と頭を悩ませた時期もありました。しかし、今考えてみると、複数の意見に触れたことで新しい見方を教えてもらったり、プロセスから自分の作品を見ていない人に見てもらうことはとても意義のあることだったと思います。難しいことですが、講師だからといって全ての意見を聞く必要はなく、そこは自分のバランスで他者の意見を取り入れていくんだという強い気持ちを持つことが大切だと感じます。

 1次試験ではデッサン選択だったのですが、絵を描いて育った人間ではないため、自信は全くありませんでした。実際、現役では1次落ちです。それが悔しくて、浪人期ではデッサンに力を入れました。私が効果があると感じたのは、Twitterで藝大生や芸大美大志望の人の上手いデッサンや好きなデッサンをたくさん保存して、何度も見ること。予備校に行くまでに、自撮りをモノクロにしたものを見ること。(50枚くらい見ました) あとは写真模写です。上手い人のデッサンを集めた「お前らうめぇ〜なぁ!!」フォルダを作って、何度も何度も見返しました。携帯だとアップでも確認できるので、どう描いているのか細かいところまで見ることができます。これが1番私には効いたので、合う人には合うかなあと。鉛筆も持たなくてもいいので是非! 

 あとはたくさん展示を見ること。私は地方勢なので、東京と比べるとやってる数は少ないですが、NHKの番組である「日曜美術館」を毎週見たり講習会で東京に来た時は展示をハシゴして見ていました。ただ作品を見て右から左へ流してしまうのではなく、納得できる部分、よく分からない部分、なんで自分はおもしろいと感じたのかしっかり分析し、咀嚼することで他者の作品が自分の血肉となるんだと思います。このように、 浪人することで、他者の作品を俯瞰で見ることができるようになった気がしています。しかしだからこそ、自分と他人を比べて自己嫌悪に陥ることが何度もありました。美術館に行くことが辛い時もありましたが、そんな時に自分を救ってくれたのもやっぱり作品たちでした。結局、私は何かを作るのが好きだからこんなめちゃくちゃな大学を目指してる訳で、離れようとしても離れられませんでした。これからも芸術に振り回されながら生きていきたいんだと、2年かけて気づくことができました。

 やることがたくさんあって焦る日々が続くと思いますが、どばたの先生や生徒のみんなは本当に本当にとても優しいので、周りに頼りながら、楽しんで行ってください!大学で待ってます!

C.Tさん

合格大学:東京藝術大学 美術学部 先端芸術表現科

出身校:人吉高等学校 現役

 

 私は高二の9月からどばたの日曜オンラインコースに、高三からは金土日オンラインコースに通い始めました。

 がむしゃらに突き進んでいた先端科受験は、楽しさと挫折が交互にやってくる、ジェットコースターの様なものでした。自分が何を考えているのかすらよく分からないし、現代アートがなんなのかも分からない。そのような心境の中で、自分だけの表現を探りながら彷徨う感覚が、心地よくもあり、辛くもありました。

 日曜コースでの制作相談の際、私は入学初期から講師の方々に「〇〇さんにしか作れない作品を作って下さい」と言われ続けていました。しかし、この言葉の意味がやっと分かり始めたのは、高三の9月頃でした。

 私が住んでいた地域は九州の田舎で、美術科高校どころかギャラリーすらもない、最寄りの美術館までは高速道路で2時間掛かるような場所でした。そして当初、私はこの環境を不利だと感じていました。しかし、山と川に囲まれた街の中で生まれる独特な営みや歴史と自分の関連性、そして、それらがどのように自分の目に写っているのか、自分はどのようなものさしでこれらの風景を見ているのか……等を一つ一つ丁寧に分解していく内に、「作りたい作品」と「作るべき作品」がリンクしていくようになり、1次試験対策の小論文も書きやすくなっていきました。

 どばたでは、「これをやれば確実に受かる!!」というような明確なコツ(思想や抽象的なもの)はほとんど教えられません。それは、そのコツが生徒一人一人全く異なるからで、それを各々が自分で1から見つけることに意義があるからだと思います。そして、どばたはそれを最大限にサポートしてくれます。

 1年半私を導いてくださった先生方や先輩方、友人たち、本当にありがとうございました。小論文の先生方へ、毎回小論の提出ができないor遅れて本当にすみませんでした。どばたの小論、心から大好きです。

 

“自分のなかに世界の全てがあるのに、どうして外ばかり見ているの?”    

映画「目の見えない白鳥さん、アートを見にいく」ED『The World Inside』より

 

M.Nさん

合格大学:東京藝術大学 美術学部 先端芸術表現科
武蔵野美術大学 造形学部 芸術文化学科
多摩美術大学 芸術学科

出身校:富士見高等学校 現役

 私は高2の秋に進路を理系大学から藝大に変更し、高3の春季講習からどばたの先端科に通い始めました。

 芸術にあまり触れたことがなく、どばたに通う以外に何をすればいいのか全く分からなかった私は、ただただ目の前の課題に答えていくのが精一杯でした。作品とはどういうものなのかも知らず、よく分からないまま地道に作り続けていました。講評でも褒められて嬉しい!良くなかったからショック!ぐらいにしか考えていませんでした。

 それは、一次試験の小論文対策も同じでした。問題を解くたびに、自分は小論文が苦手なのだと突きつけられる様で、辛く感じていた期間がとても長かったです。一般的な小論文や国語の問題が得意だった分、小論文が上手く書けないという状況はダメージがとても大きかったです。

 二学期の後半に入り、課題に答えて作品を作り続ける中で、徐々に自分がやりたいことや興味の方向が分かっていきました。思うように造形できなかったり、自分の技術の無さに歯痒さを感じていた中で、身体表現という自分が自由に表現できるメディアで作品を制作できたことがきっかけでした。

思うように表現できたという体験は、私の表現者としての自信に繋がり、それは一次試験の小論文の内容にも影響しました。自分の経験や考え方を自信を持って表現することができるようになったと思います。

そのまま入直の一次対策やポートフォリオ期間に入り、年が明けてから一気に自分の中で考え方や方向性がまとまったという感覚がありました。振り返ると、いわゆる何かを掴んだタイミングだったと思います。入試ギリギリでしたが、その時得たものは今後ずっと自分が大切にしていくべき、表現を続ける上でとても大切なものだと感じます。

私は1年の受験生生活を通して、とにかく環境に恵まれていたと思います。

作品の為なら協力してくれた家族や学校の先生と友人、一緒に考えてくれたどばたの先生方や友人、周りのたくさんの人に支えられて制作を続けることができました。

上手くいかないと感じた時や壁にぶつかるたびに、どばた先生方の言葉や一緒に受験に向かっている友人が助けになってくれました。先生方が私を生徒ではなく、ひとりの表現者として向き合ってくださり私のペースで対策を続けられたことも、とても大きかったと思います。

美術館や展示にもあまり行ったことがなく、右も左も分からないまま入塾した私を、どばたの先生方は受け止め、合格まで導いてくださいました。考え方を否定することなく丁寧に、いつも支えてくださった先生方には感謝の気持ちでいっぱいです。どばたに通って良かったです。本当にありがとうございました。