先端芸術表現科 2017

北川 光恵 さん

東京
私立広尾学園高等学校 現役

合格大学:
東京芸術大学 美術学部先端芸術表現科

 元々海外の大学を目指していた私は高校1年生から一年半、すいどーばたの海外美術留学準備コースに通っていました。しかし高校3年生の春に急遽進路を変更し、夏季講習から先端芸術表現コースに通い始めました。

 最初はコンセプトや伝えたいことがたくさんあっても、どのようにして形にするのか、どのメディアが最適なのかなど「作る」ことの難しさに直面しました。しかし、作っていくうちに自分が得意とする作品形態や自分の思考パターンが見えてくるようになりました。もちろんそのプロセスの中で先生方に相談することは多かったです。しかし私の場合、先生方から直接的な指導をもらうことは少なく、どちらかというと話し相手のような存在でした。制作でつまづいたことや今考えていることを話すと、何かしらの反応が戻ってきたのでその反応の中からヒントを探っていました。自分の作品を違った観点から見てくれるので作品内容がより深く、広くなっていった気がします。

先端の受験にはポートフォリオに加えて小論(またはデッサン)と実技、そしてセンター試験もあるので短い期間でやることはたくさんあります。しかしここで過ごした時間や考えていたことは当時の自分が思っていた以上に濃密で現在の自分に影響していると感じています。

作品制作は受験のためとはいえ、自分や社会を見つめることなので、「受験」という言葉に捉われずマイペースに制作していただけたらなと思います。すいどーばたにはその自由を認めてくれる環境と人々がいますよ。

布谷 麻衣 さん

埼玉
県立坂戸高等学校 卒

合格大学:
東京芸術大学 美術学部先端芸術表現科

 私は、先端ゼミに2年間所属させて貰いました。その中で、この場の長所だと感じてきたことは、ここの講師陣はアーティストやキュレーターとして一人一人が異なったベクトルの制作活動をしている方々であって、「作品を作る」上でのアドバイスや教示が生々しく多面的であると言う事です。
また自身の持つ問題意識や、興味の対象を深めるためリサーチをして行く過程で行き詰まった時、親身に制作相談にのってくださいます。

 私自身「先端芸術表現科」という様々な美術領域を横断する学科を目指す中で、自身の行いたい美術活動とは何なのかという問題に幾度も幾度も直面し、答えを見つけられず悶々とした時期がありました。
それらを講師陣に相談した時に、講師陣は私に答えを与えるわけではなく、問題を理解し解決する手段や例えを教えてくれました。誰かに与えられた答えではなく、自分で答えを手繰り寄せられた事は本当に良かったと、感じています。

 これからの受験生に私が伝えられる事は「自分で答えを手繰り寄せる」いう事です。
自分の行いたい制作のテーマを見つけるため、講師陣や周囲の人の知識や知恵を吸収して、自ら咀嚼し消化する事が大切です。そこから自分がワクワクするような、強い興味を持てるテーマを見極めて、素敵な制作活動に繋げてください。
それらをサポートしてくれる場と、素敵な講師陣がここにはいます。それらを存分に利用して、暖かい春を迎えてください。応援しています。

元岡 奈央 さん

愛媛
県立松山東高等学校 現役

合格大学:
東京芸術大学 美術学部先端芸術表現科

 私にとって、常識を全て真摯に受け入れることは生身の人体に心肺蘇生を行うようなものである。今まではこの心肺蘇生を行う存在が私を導いていた。ありがたいが、痛いしちょっと困るのである。
すいどーばた美術学院において、マイペースな私は、一旦仮死状態に陥り、生き返ったような体験をすることができた。学校生活では得ることができない素敵な友達ができた。みんな好きなことをやっているように見えて、変だった。
 別に変にしようとしなくても製作するうちに自分が表面的にも形成されるのだと思った。
 一方で、私は友人のアドバイスなどからいろいろ実践をしていった。例えば「好きなことをすればいい」と言われたりして、ちょっと途方にくれたけど今芸術の学校にいる。私は自分がやりたいことをしていいのだ、という実感を学んだ。
 話は変わるが大まかに実践していたことは3つだ。自分のやりたいことを挑戦する。自分の得意な方法を見つける。周りの人と影響を与え合う。
 大切な体験をさせてくれた友達や家族、先生、近所のお兄さんお姉さんおじさんに感謝している。

川本 杜彦 さん

東京
私立麻布高等学校 現役

合格大学:
東京芸術大学 美術学部先端芸術表現科

中学3年の頃に、私の主義主張や社会に対する批判意識、描く将来像などの「私を構成している」と自認する要素が、自分で選んできたようで実は選ばされてきただけなのではないか、という疑念を抱いた。ちょうどその頃、駅の階段から転落して車椅子生活になったり、試験中に気絶するという経験をしていた。当たり前に自我を支えていた私自身の身体への信頼を揺るがす体験によって、盲目的に未来へと突き進んでいた歩みを止めざるを得なかったのだ。
それからというもの、どれだけ知識を増やしても、どれだけ新しいものに出会っても、空虚であった。「所詮は先人が創り出した道具に過ぎず、私はそれらを組み合わせて使いこなすことでしか自己を形成できないのか。」という想いが渦巻いて消えることは無かった。

そんな私は、高校2年の夏に「東京藝術大学先端芸術表現科」の存在を知った。何よりもその入学試験の内容に心惹かれた。「こんなにも全人格的な要素を要求してくれる試験があるのか!」ということがただただ嬉しかった。倍率や卒業生の進路、教授陣のことなど正直どうでも良かった。とにかく心から楽しめる大学受験をしたかったのだ。
どばたの先端科のカリキュラムは「決めつけ過ぎない」ことの精度がとても高いと常に感じていた。全体を通してみれば、初期はジャンルの縛りがある課題を多種多様にこなし、徐々に個々人の興味関心や得意分野に特化した表現をする機会が増える。その過程で、講師陣によって設定された課題やスピード感に必ずしも常に答えられるわけではない。私自身そうだった。だが、完成に至らなかった作品や授業で上手く説明出来なかった動機など、歩みをためらう気持ちにこそ私自身の深層心理が反映さえているのではないかと思うことが出来たのは、講師の先生方が生徒の吐き出したものを決めつけ過ぎず、様々な可能性を提示することで並走して下さったからである。

講師の先生の1人が、藝大の最終合格発表を待つ期間に私に語った言葉が忘れられない。
「ここは、美術教育をするところではない。」
私が1年をかけてどばたで何をしたか、ということを自問自答すると、それは過去を遡り、自らの人格がいかに形成されたかを見つめ直すことであった。知らず知らずの内に私が手探りで掴みとっていた価値観を再発見し、作品制作を通して自らに「本当にそれはお前の真実か?偽っていないか?」と問い続けた。そして、目の前の事象を生々しく感じ取る肌感覚と、自らを社会に組み込まれた一つの個として俯瞰する視点とを猛烈に行き来しながら生きることが、私にとっての何よりの喜びであると確信することが出来た。

最終面接が終わり、上野公園を通り抜けながら私は思わず呟いた。「私は幸せだ」と。「解放された」「終わった」「上手くいった」ことへの安堵や嬉しさを抱いたのではなく、何よりも楽しいと思えることに挑戦する機会を与えられたことへの感謝、支えてくれた多くの人がいたことへの感謝であった。

最後に、このページを見ている「あなた」へ。
「表現すること」が抱える分からない、割り切れない、言葉にならないという不安定さに向き合うことは、きっと人間を強くする。自分の何処から来るのかと思うほど湧き出てくる情熱と、妥協したくないという覚悟を胸に、自分の頭と体の全てを使って、自分が信じるべきもの、信じたいものを手繰り寄せてほしい。その手助けをしてくれる場所が、まさにここにある。最高だ!

中西 真穂 さん

埼玉
県立浦和西高等学校 卒

合格大学:
東京芸術大学 美術学部先端芸術表現科

私は現役の時、武蔵美の映像科を志望していたため、どばたの映像科に通っていました。
その後、冬に芸大先端を知りましたが、志望変更が遅かったので浪人して受験することに決めました。

どばた先端に通い始めた時、はじめは制作の進め方が分からず、漠然と扱ってみたいメディアや表現の方法だけが頭にあってテーマが決まらず悩んでいました。しかし、授業やWSに取り組む中で夏頃から自分の興味のあるものが明確になっていきました。自分の中にあるこだわりや引っかかりに気づくことが出来たのだと思います。

また、先生から、制作のメモやドローイングをまとめるノートをつくってみたらどうかとアドバイスを頂きました。これは制作はもちろん、小論文やポートフォリオを作る際にとても役立ちました。普段から文章やイメージを書き出すことで、着実に自分の考えを進めていくことが出来ました。

小論文対策の課題は毎回面白く、ブドウ糖を摂りながら書くとどこまでも発展しそうな考えや、掘り下げたい領域が見つかっていきました。
先端科で学ぶことと自分の生活が地続きになっていると実感しながら過ごした一年はとても楽しかったです。

丸山 華乃 さん

京都
私立京都女子高等学校 現役

合格大学:
東京芸術大学 美術学部先端芸術表現科

私がどばたを知ったのは高3の夏です。
それまであまり芸術に触れることがなかったため、どうしたらいいかわからず困惑していた私に対して先生方は、どうしたらいいかを明確に示すのではなく、私が私なりの方法で制作を進められるような助言や、参考になる作品を教えてくださいました。
 また、講評の際はアドバイスと共に良いところも言ってくださり、これまで気付かなかった自分の特徴や良さを知ることができました。
私が何をしたいか、何を表現したいかを優先にした制作ができたと感じます。

 遠方に住んでいたため通信講座を受講していましたが、先生にメールをするために頭の中を言葉に変換する、という作業も力になりました。
ポートフォリオに載せる文章や小論文において、その力は大いに役立ったと感じています。

 講習会で上京した時には、同じように先端科を目指す受験生の方がたくさんいました。
他の受験生の方の作品を見ることは、想像以上に良い刺激になります。
同じ目標を持つ人がいることでモチベーションも上がりましたし、パソコンの使い方を教えてもらったり、ポートフォリオを見てもらったりと、フランクにアドバイスをくれる存在がいたことは本当にありがたかったです。

 約半年という短い期間の対策で私が合格できたのは、先生方や受験生の方がいたからです。とても有意義な、楽しい受験期間を過ごさせていただきました、ありがとうございました。