映像科 2021

海野 美奈さん

東京
都立晴海総合高校

合格大学:
武蔵野美術大学 造形構想学部 映像学科

「自分を知る」

ただ最初は映像を作るという仕事に就きたい、そのために武蔵美に行きたい、とぼんやり考えて高校の先生の勧めですいどーばたの映像科に通っていました。入試直前講座では感覚テストを作りデッサンを描く。いくつもの課題を提出して、また考えての繰り返しにいつの間にか頭が追いつかなくなっていました。自分は何をしたいのか、どんな映像を作っていきたいのか、ということを曖昧なまま放置していたものがその時の自分にのしかかり、感覚テストの制作が退屈なものになっていました。そんな感覚を引きずってか入試結果はデッサンも感覚テストも点数が取れず補欠止まりでした。浪人するかどうか悩んでいた私に先生方は浪人した方がいい、合格させるから大丈夫と言ってくれました。その言葉に背を押され浪人を決め、私はすいどーばたに通い続けました。

浪人一年目、多方向からアドバイスをくださる先生方のお話を聞いたり、時折ある映像研究に真剣に向き合ったり、自分とは全く異なる作品を見たりしていくうちに自分の中でやりたいこと・そうでないことがはっきりしてきていました。すると、徐々に感覚テストもこれが描きたいと自信を持って制作することができました。先生方は悪いところも良いところもはっきり私たちに伝えてくれます。それに落ち込むこともあります。しかし、自分はこれがやりたいのだと伝えれば先生はどうすればより良い作品になるのか共に考えてくれます。大切なことは自分の意思をきちんと持つこと、立ち止まってしまったら迷わず相談することです。そのことを自覚すると自分の納得のいく作品が描けるようになりました。

もっと早く大切なことに気づけていたらよかったと思うことはあります。でも、浪人して二年間すいどーばた美術学院に通えたことはこれから映像を作る道を目指す上で重要な時間だったと思います。映像科の授業は大学に合格することだけではなくその先の映像人生を考えさせてくれました。曖昧だった私はすいどーばたのおかげで確かに成長できた気がします。

もし映像の道に進みたいけれどまだ曖昧だと感じるのであれば、ぜひすいどーばた美術学院映像科に来て先生方や仲間とお話してみてください。受験に向けて作品を作るうちに自分のことを知れるはずです。

藤井 理央さん

東京
学芸大学附属高等学校 現役

合格大学:
武蔵野美術大学 造形構想学部 映像学科
東京造形大学 デザイン科 映画映像専攻

「講評のメモ量は、本番の自信度」

私は、高校一年の早い時期から映像を専門的に学ぶ大学への進学を決めていました。そのため、いくつかの予備校の体験をしていた上で、二年の冬季講習からすいどーばたの映像科に通い始めました。決め手は、家と高校からの行きやすさと、入試で使う感覚テストと小論文・デッサンの課題以外に映像実習や作品研究といった入試の先の実践を経験できるという点でした。

今年は4月からコロナの影響でオンライン授業からスタートしました。この時期に何本か映画の作品研究の授業があり、それが印象に残っています。これは、ある映画を各自で観てワークシートを参考にその映画の魅力的な部分を考え、それをみんなで提示し話し合う、というものです。今までただストーリーが面白いとか、なんとなく綺麗という感覚で見ていた映像作品を、なぜ主人公はこの職業だとか、なぜこの場所で台詞を言うのかといった制作者の演出の意図を気にして見るようになったきっかけでした。また、自分はこの作品の何に惹かれたのかを考えるので、自分の撮りたい作品がどういうものなのか少しづつ意識できるようになりました。

緊急事態宣言の解除とともに、アトリエでの授業が開始されると、写真集制作と映像制作を行いました。撮影前に、何に興味があって何をどう撮ればその魅力が伝わるかを先生方とよく相談しながらコンセプトを決めました。実際にカメラで撮るというのは目で見るのと違って、視点が一方向に制限されます。つまり、映像の中の世界は撮影者の意図した見え方でしか映し出されない。逆に言うと、撮影者は自分の視点やその動きを見る人と共有できるのです。例えば、あるものを上から見るとこう見える。そのまま腰を落としすと視点は下がり、見ていたものの光の当たり方が変わり輪郭も変わる。当たり前のことかも知れませんが、無数にある見え方の中でそれをどう見るか、つまり主体の視点の在り方が画面の中を作り出す、ということが非常に難しく面白さがありました。

ここまで作品研究や実習と、入試の実技演習について触れてきませんでしたが、私は特に感覚テストにおいて冬まであまり上達を感じられませんでした。課題に対する考えや出来事の選択など沢山エスキースをして、想起したことを描くことに慣れてはきたものの、本当にそれがいい映像になるのかという点で自信がなく、あとから入学した生徒の作品を見て焦る時期もありました。唯一自信があったのは、制作のあと行われる講評の先生方の言葉をメモしていることと、過去の受験生の参考作品をなるべく多く読んでいたことです。私はそれを武器にしようと考え、そこから得られるものを素直に利用することにしました。メモには同じ言葉が何度も繰り返されていました。それを読むと、一番初めに習った、映像作品として綺麗かどうか、面白がれるかどうか、にたどりつくのです。私が作るのは、絵のついた小説でも脚本でもない。流れていく映像です。作品研究や実習の経験と感覚テストは大差ない。それを自覚すると課題に対する解釈を考えすぎるより前に、まず大きな映像のイメージをエスキースし、作りたい作品をシンプルに描くことができるようになりました。それからは感覚テストが楽しく、本番まで自信をもって制作ができました。先生方に何度も同じアドバイスをしていただきましたが、それは何度も自分で考えなければアウトプットするのが難しいためだと思います。少なくとも私にとっては、一度聞いただけで自分のものにできるような課題ではなかった。それをなんとか形になるまで教えていただけたことが、本番の心強い自信になったのだと思います。

神田 萌果さん

東京
都立北園高校 現役

合格大学:
武蔵野美術大学 造形構想学部 映像学科
東京工芸大学 映像学科
東京工芸大学 写真学科

「感覚テストは楽しい」

「回答始め」の合図のあと、問題文が印刷された薄い紙をぺらっと捲ります。太めの文字で、今年の感覚テストの試験問題が書いてあります。
一目見た瞬間、自分の頭から血の気が引くのがわかりました。『はるか遠くを見つめて』。
今まで考えたことのないキーワードでした。

感覚テストの試験が開始して間もなく、他の受験生が鉛筆を走らせる音がもう響き出して、焦りと緊張で頭がまっしろになりました。私が気持ちを切り替えるためにしたのは、マスキングテープを画用紙の枠に沿って貼ることです。いつも通りにびびっとマスキングテープを伸ばして貼っているあいだに、少し落ち着きました。どうにかして問題に答えようと考えを巡らせ、どばたの入試直前講座で作った感覚テストでリメイクができるかも!と思いつきました。

私が感覚テストでいちばん気合いを入れていたのは、文章です。下書き用紙に、思い出した文章を入試問題に合わせて改変しながら甦らせていきます。自分の答え方を決めてからは、周りの鉛筆の音も気にならなくなりました。映像イメージの湧く勢いに任せて書けたあと、文字数を数えると1000字近くありました。要らない言葉を消して、言い換えのできる表現を推敲して、文字を800字ほどに削っていきます。日本語は面白いです。言葉の選び方が少し異なるだけで、読み手に伝わる情報がまるっきり変わってしまうことがあるからです。「だった」と「ている」の違い、一人称の「私」と「自分」の違いなどもそうです。「柔らかい」と「やわらかい」もそうです。自分にしか分からない差異だとしても、表したい事柄に対して誠実な言葉選びをすることは、感覚テストにおいて重要なことだと思います。それは映像作品をつくる将来にも同じことが言えるはずです。自分の価値観に自信を持つためにも表現の推敲は大切です。

下書き用紙の上で完成した文章をもう一度読むと、満足感でたまらない気分でした。文字数に合わせて絵を描く大きさと位置を決めて、絵を描く作業にうつりました。

硬めの鉛筆で画用紙に線を引いていきます。白い骨を描きたいので、マスキングテープを画用紙の上に貼り、カッターで鉛筆の線に合わせてテープを切って、骨の部分にだけテープが貼ってある状態にします。黒いパステルを茶漉しの網で大根のようにおろし、画用紙に粉を広げます。小さく畳んだポケットティッシュで、粉状になったパステルをまんべんなく画用紙に伸ばします。高級で柔らかいティッシュだと摩擦に負けて破れてしまうため、私は駅でリフレのスカウトマンがくれたゴワゴワめのポケットティッシュを使いました。何かに負けた気がしますが💢

マスキングテープを画用紙からそっと剥がすと、パステルの色が付いていない白い骨がくっきりと浮かび上がります。この瞬間はいつも素敵です。

絵が描き上がった時、試験時間は45分くらい残っていました。ふと前の席の受験生が、青い空を描いているのが目に飛び込んできて、そのとたん、少し不安になりました。『はるか遠くを見つめて』という試験問題から、私の回答はずれているんじゃないか? 空も星も登場していないけれど、伝わるだろうか? それでも、「自分自身が心の底から面白い、撮りたいと思うものを、自信を持って描くのがだいじ!」と、どばたの先生がよくいっていた言葉が浮かびました。空や星は『はるか遠く』には相応しいけれど私にとってはカメラで撮りたいものでは無かったので、うそをついてそれらを感覚テストに描かなくても良いのだと思えました。

文章をぎりぎりまで修正し、一文字ずつゆっくりと本番の画用紙に書き写しました。試験は、緊張したけれど、同じくらい楽しかったです。楽しかったのは、どばたに通って、自分が素敵だな、と感じるものを恥ずかしがらずに正直に描けるようになったからです。

チャイムが鳴って、答案が回収されました。青い空や飛行機の絵が描かれた画用紙の上に白い骨の絵を乗せたけれど、今回は恥ずかしくなかったです。

有吉 優真さん

神奈川
公文国際学園高等部

合格大学:
武蔵野美術大学 造形構想学部 映像学科
日本大学 芸術学部 映画学科

心から「良かった」と言える選択を

私はもともと、藝大の先端芸術表現科志望でした。映像を扱うインスタレーション作品や自主制作映画・短い映像作品などから、立体作品・身体表現など様々な媒体を扱って作品の制作を行っていました。しかし、浪人生活を送る上で「自分は何をどう表現したいのか」「どうして美大を目指しているのか」がわからなくなってしまう時期が訪れました。これは恐らく、美大受験に限らず芸術の道に向かおうとしている誰しもが一度は経験する悩みなのではないかと思います。一人で考え込んでいても答えが出ない悩みに取り憑かれたときに寄り添ってくれた表現が、私の場合、映画や映像でした。その世界の住人や空気や音楽などのすべてが私の視野を無限に広げ引き出しを増やしてくれました。今、どこにいても誰でも触れ合うことのできる映像媒体ですが、こんなにすぐそばにある世界に一歩足を踏み入れるだけで誰かを救うことができるのだと感動して、見失っていた創作意欲が掻き立てられました。そこで「私は映像表現の道に進みたいのだ」と初めてはっきりと自覚し、志望校を武蔵美の映像科に変更しました。

どばたの映像科に通い始めたのは受験をする年の冬季講習からで、今年はコロナウイルスの影響もあり、私はオンラインでの受講生でした。一般論で言えば、「え?そんな感じで間に合うの?」と思われるかもしれません。大丈夫です。授業内容は濃く効率的で着実に力をつけられるものですし、尚且つ先生方が親身になって一人一人に合った教え方をしてくださるおかげで、取り組み方次第で十分に間に合うと言えます。

武蔵美の小論文・感覚テスト対策では、基本的な制作の仕方はもちろん、生徒個人の興味関心や物事の捉え方に作品をうまく引き寄せて制作を行うことができるよう一緒に考えながら逐一アドバイスをくださりました。そして、将来映像を手がけていく上でどのような表現をしたいのかというところまで見据え、作品をさらにそれぞれの個性が見える完成度の高いものへと落とし込む指導をしていただけます。どばたの先生方の指導は、予備校という硬い型に嵌らないかなり柔軟なものだったので、相談や質問もしやすく助かりました。オンライン講座でも、アトリエとほぼ同じ環境で受講できるようにサポートしてくださるので、遠方から通うのが難しい方やコロナウイルスの状況等によってアトリエでの受講に心配がある中でも対策を万全に行うことが可能です。
やりたいことがはっきりと見つかるのに時間がかかったり、やりたいことは見えているけど現在の状況でなかなか踏み出せなかったり、勉強方法がわからなかったり…特殊な美大受験に対し不安を抱えている人は少なくないと思います。でも、それで諦めたりする必要は全くないし、始めるのに遅いなんてこともないと、自身の受験を通して感じました。自分の気持ちとやる気次第で掴むことはできるし、どばたの映像科は、その気持ちとやる気を高めつつ保てるようにしてくれます。新たにオンライン講座が増えて飛び込みやすい今、一歩一歩、着実に力をつけながら好きなことをのびのびと学べる環境に身を投じてみること。これは、将来の自分が振り返ったときに宝物になる経験で、必ず「良かった」と言える選択になると思います。少なくとも私は、自分の選択に今「良かった」と自信を持って言うことができます。迷っている方はまずお話だけでも聞きに行くことを強くお勧めします!どばたの映像科なら、自分の感性を豊かに表現したい受験生を絶対に支えてくれます!

相ヶ瀬 広大さん

東京
都立科学技術高校 

合格大学:
武蔵野美術大学 造形構想学部 映像学科

制作の醍醐味

武蔵野美大映像学科の総合型選抜であるクリエイション資質方式の対策を始めたのは、6月末の初夏講習からでした。3日間の講習は、エスキースの進め方や、作品のコンセプトの設定について細かいレクチャーを受けることから始まりました。コンセプトの設定は、なぜこの作品の制作をしようと思ったのか、なぜ自分はものを造るのか、という根幹の部分を省みることでもあります。エスキースを始め、写真や映像以外に自分が興味のあることを沢山書き出す作業の中で、私には制作したい表現の手法だけがあって肝心な主題やコンセプトが決まないという問題に直面していました。制作していく上で全てに明確な理由が必要だという考えから、恐怖心すら生まれていたのです。そこで、そのことを授業中に相談してみると、「ヤバそうだったらその時は言うから、フィーリングで全然いいから作ってみな」とアドバイスをいただき、それ以来感覚的に制作できるようになりました。先生の言葉で、失敗を恐れなくなりました。打ち明けることができたのは、先生とフランクに話せる関係性があったからだと思います。それからはカメラを持って積極的に外を出歩く機会が増え、制作が順調に進むようになりました。

映像科に入った当初は映像作品を制作していきたいと思っていましたが、校舎にある写真集や美術館で観た写真に感化されて、次第に自分も写真作品を制作したいと思うようになりました。そしてクリエイションで写真作品を制作しました。撮影していた時のフィーリングや、パソコンに取り込んで写真のセレクトをしているときに感じたことを先生と話しながら、コンセプトに繋がるキーワードを探しだし、最終的な写真のアウトプットの形式を決めていきました。作品と同時に今までの自分を振り返りながら、自己推薦調書にもコンセプトを落とし込んでいきました。恐怖心が消えたことによって、興味のあるモチーフを積極的に扱う事ができ、作品を作り込むことに繋がりました。

夏季講習には映像実習がありました。スクリーンに投影された各々の映像作品を皆で観た後、講評を受けました。同じテーマで作品を制作していても、テーマの解釈からモチーフの選び方や扱い方が異なります。アングルや時間に製作者の意図や意識が映り込み、自分が今まで単なるモノとしてでしか捉えていなかったものが作品の要として扱われていたのです。それらを共有し合う経験により、自分の考えが無限にある解答の一つであるという事を実感し、自分の制作を多角的に見つめることができるようになりました。そして、映像実習で制作した作品をインスタレーションへ発展させました。映像と空間が干渉している光学現象を目の当たりにしているとき、作品を創ることの醍醐味を感じました。

振り返ってみると慌ただしい3ヶ月間でしたが、完成した作品に達成感や満足感を得ることができました。不合格であったとしても、作品制作の経験は一般入試の感覚テストや小論文に生きていたと思います。私にとってクリエイション対策は、はっきりと自分の成長を感じることができ、大学進学後やさらにその先の自分に繋がる大切な時間でもありました。

山下 莉理さん

東京
駒込高等学校 現役

合格大学:
武蔵野美術大学 造形構想学部 映像学科

「すいどーばたでの学び」

私がすいどーばた美術学院に通い始めたのは去年の6月からでした。コロナウイルスの影響もあり、少しスタートに遅れてしまったと不安に思いながら通っていました。しかし、全くの初心者でありながら遅れて入ってきた私に、先生方は道具の使い方や先を受験を見据えた課題の取り組み方を丁寧に教えてくれました。さらに友達もすぐにでき、互いに高め合うことで創作意欲も湧き、より良い作品を作り上げることができました。

オンライン授業でもそれは同様で、一対一の指導や、全体の講評を通して自宅でも教室に行っているのと変わらない力の入った作品を作ることができました。どばたに通うようになってからは、作品研究や映像実習を通して今まで曖昧だった武蔵美の映像科に行きたいという気持ちがはっきりとした強いものになっていくのを感じました。

武蔵美の試験を受けるに当たって、チャンスは多い方がいいだろうと一般試験の前にある総合型選抜、学校長推薦選抜試験に向けての対策も通常の授業と並行して進めていきました。また、二つの試験の前には、特別講習が設けられていて、その試験を受けるための対策や準備を集中的に行うことができました。この講習に参加している人はみなその試験に向けて意識が高まっているので、空気も引き締まり、互いにアドバイスしたり、参加している人の自分にはない考えなどが聞けたり、とても有意義な時間になっていました。

ディレクション試験の対策時には、特に他の人の意見や考え、話し方などさまざまな部分で参考になることが多くありました。本番と同じ形態、時間、配置で練習をすることが多く、試験前から対策がしっかりでき、心にも余裕が生まれ、試験当日も焦ることなく楽しく試験1日目を終えることができました。終わった後も、すぐに予備校に戻り、次の日の面接対策をしました。先生方にその日にどんなディスカッションをしたのかを詳しく話し、面接でどんなことが聞かれそうか、自分の考えを改めて整理したりしました。

こうして次の日、しっかり考えをまとめた上で面接に臨むことができました。どばたから武蔵美の映像科に行った先輩はとても多く、過去の試験の雰囲気や内容が記録として残されていたので、それも参考にさせて頂く事もでき、感謝の気持ちでいっぱいです。