好古 (こうこ)とは「古い時代の物事を好むこと」です。
受験生のみなさんはセンター試験直近ですね。
試験準備、体調管理も大切です。
点数 up 願ってますよ。
絵を描いたり、ものを作ったりが好きな人の中には古典作品が好きな人も多いかと思います。
すいどーばた日本画科、安原成美講師もその一人でしょう。
安原講師は芸大保存修復博士課程の最終3年に在籍です。
今回、博士審査展での研究発表が認められ野村賞を受賞となりました。
↑発表会場の安原講師
そこで興味が有る方、受験生、高1、2年生などにほんの少しですがご紹介です。
研究テーマは「旧祥雲寺客殿障壁画の復元研究」。
『国宝「松に黄蜀葵(トロロアオイ)及菊図」智積院蔵の想定復元模写を中心として』です。
簡単に言うと復元模写をして「最初はこーなんでは・・・」と、作者の狙いを予想をする研究ですね。
↑現状の智積院での展示図
「松に黄蜀葵及菊図」の作者は、これも国宝の「松林図屏風」などで知られる長谷川等伯です。
現存する画図は時代状況の変遷の中で当初と随分と違ったかたちとなっている、との緻密な模写に裏付けられた予想解釈を元に、その当時の長谷川等伯が想い描いた作品意図や構成、表現効果を絵画復元の立場から視覚化していくことです。
↑安原講師の想定復元模写図
で、研究発表を聞き進むにつれ、確かに脳内にその画図映像が浮かび上がるんです。
安原講師の説が無理なく入ってくるんです。
現地現物の綿密な取材や、ミリ単位での「上げ写し」から立ち上がる判断がこの研究新説の妥当性を向上させ復元予測をしっかりと支えているのでしょう。
芸大美大などの模写の授業で教わる「上げ写し」は、図柄を写すだけではなく、作者の制作意図を読み取ることに繋がる作業となります。
↑上げ写し作業
参考の写真で解りますでしょうか・・・
最初は墨での作業です。
作品画面上で薄い和紙を巻き上げてはおろし、残像を利用し写していきます。
この段階で作品を読み込んでいき、絵の具の下に有る線、線質や意図までもさぐりながらの作業です。
ここが大切ですね。
模写とは言えかなり個人の感覚も反映しますね。
↑想定の画図移行配置
尚、ここで模写の話に踏み込むと面白いのですが、長くなります。
ご参考までに主な模写の種類を列記しておきます。
・臨写(臨模) ・現状模写 ・復元模写 ・想定模写(推定模写)
どんな立場で考え行うかで随分と変わります。
美術的、技術的なだけではなく歴史や教育、政治も入ってきますね。
中国、韓国、ヨーロッパなど国によっても随分違うようです。
今回のご紹介はここまでですが、この研究は画面だけでは無く、当初の室内構成も想定復元がされていました。
室町時代から安土桃山時代の障屏画(障壁画と屏風絵の総称)は本当に魅力的ですね。
これからもこのロマンのある研究は続きがあるようですので、安原講師の今後が楽しみです。
センター試験後、日本画科芸大系は直ぐに恒例の芸大模試となります。
受験生はそこで会いましょう。
2016年1月14日(木)〔日本画科〕