油画科 2019

渡邊 紗妃 さん

東京
私立品川女子学院高等部 卒

合格大学:
東京芸術大学 絵画科 油画専攻

「合格体験記」

二浪正直めちゃくちゃキツかったです。でも絵を描く事自体とかはあんまりキツくなくて、受験に関してはその延長線上にあるって意識でした。
周りの焦りとか足止め食らったまま過ぎてく時間からくる不安でかなり疲弊しました。今思えば結局その不安も絵に影響してたなって思いますけど…。

藝大を志望して予備校に通い始めたのが高3の夏頃で結構遅かったんですけどそこから二浪した時間全て合格にもこれからの人生にも必要な時間だったと思います。
どうしても現役の時今と比べると藝大に行きたい!って気持ちとか存在の実感とかなかなか自分の意識だけじゃ強くならなかったです。でも現役で一次通って、そこでやっと合格が見えてきた感じがしました。あの時受かってなかったら本当に途方にくれてたと思います。

浪人中の2年間は技量も上げつつ、絵がなにかとか根本的な事とかなんか色々一日中毎日考えてました。一浪は一次で落ちて、二浪するか悩んだけどやっぱ悩んでるってことは後悔も今後見えてくるなって思って浪人決めました。今年も藝大一本にしてこれが最後って気持ちが強かったです。本当に自分が覚悟を決めてるのを実感しました。

一次受かって、もう踏ん張って居座り続けるイメージでぐ〜って、今行くしかねえ〜!って、歯食いしばりながら描いて最終合格しました。
行きたいって気持ちは本当に結果に直結するなって思いました。
一浪からどばたにきたんですけど本当にいいライバル?戦友みたいなのを得ました。入試中バチバチに本気でそいつと戦った記憶は一生忘れません。先生も扱いめんどくさい私に真摯に向き合い続けてくれて感謝してもしきれません。ありがとうございました。

後藤 果歩 さん

青森
私立八戸工業大学第二高等学校 現役

合格大学:
東京芸術大学 絵画科 油画専攻

「受験を振り返る」

学校の先生の勧めで高1の時から主に夏季講習と冬季講習を受講していました。
普段は地元の学校で受験対策をしながらすいどーばたの先生に時々学校に来てもらったり、スカイプで会話しながら講評をしてもらっていました。
長い間自分のやりたいことが分からず、微妙な絵ばかり描いていて悩んでいたのですが、入試直前講座を受講したおかげで、藝大合格までなんとかたどり着くことができたと思います。
 入直の課題で「音」をテーマに描く課題が出た時に、初めて自分の表現したいモチーフに出会えたと感じました。そこから先生が自分の意見を尊重しつつ丁寧に指導してくれたおかげで、頭の中を整理することができました。
 面接の対策もしっかりとしてくれたので、本番はリラックスして臨めました。
自分の考えが横道に逸れそうな時は元の道に戻そうとしてくれたり、その道が間違っていなければ背中を力強く押してくれました。先生たちには精神面においても支えられました。不安になるたびに先生に不安な事を伝えました。その度に、自分が落ち着くまで話し相手になってくれました。
 入直クラスでは同じ目標を持つ同年代の仲間が多くコミュニケーションをとりながら情報を共有できたのでクラス内の環境はとても良かったなと思っています。
試験期間も夜遅くまで先生が一緒に考えてくれた事、本当に感謝しています。
  この入直期間は自分にとって新しいことで溢れすぎてパンクしそうでしたが色々な人のサポートがありつつ、今までにないくらい楽しく充実した時間を過ごすことができました。
すいどーばた美術学院の先生方、本当にありがとうございました!

樋口 実優 さん

東京
私立松蔭高等学校 卒

合格大学:
東京芸術大学 絵画科 油画専攻

「合格体験記」

私が初めて油絵を描いたのは高3の夏です。
それまではあまり勉強もせずバスケ一色の生活をしていました。
初めての藝大受験は2次で落ちてしまい、そこから浪人を決め、どばたに来ました。母とは1浪までと約束しており担当の先生にそのことを伝えると即答で「うん、今年合格しよう」 と言いきったので、驚きました。
他の人ならもっと考えこむのに、、その時の言葉と表情が強く印象的でその後の支えになりました。
授業作品、コンクールで自分が納得のいく絵を描けたのはほんのわずかです。特に最初の頃は作品に手を入れすぎたり、見づらくなったりして失敗。冬季講習や入直も思い通りに作品が出来ず失敗だらけ。しかし、その繰り返しをしたことでコレだっ。という自分の中のポイントが分かってきました。

私は不器用なので、今年の試験の支持体が倍版になっただけで迷走。木炭紙と同じように描けばいいのに、それが出来ず元に戻るのに苦戦しましたが、試験ギリギリでなんとか自分の描きたい絵になりました。
そんな中、1次を無事通過し2次の2日目、試験会場からどばたに帰り、最終日に向けての絵が決まらなく焦っていました。
体力はあるので他の人が帰っても最後だから満足いくまで残りたいと思っていました。その時先生が「 納得のいくまでやりな 」と声をかけてくれたので自分がもうここまでやればいい。という所まで出来ました。感謝です。最後に先生が 受かってこい と送り出してくれた言葉通り、私は合格することができました。
これまで関わってくれたみなさんに感謝しています。同世代の人が描く絵に沢山の刺激を受けました。1年間楽しかったです、本当にありがとうございました。

中山 夏希 さん

和歌山
私立近畿大学付属新宮高等学校 卒

合格大学:
東京芸術大学 絵画科 油画専攻

「合格体験記」

私は元々現役生の頃デザイン科にいましたが、自己表現の奥深さに興味を持ち一浪目で油画科に転科をしました。
油画科の先生方は木炭も油絵も触ったことがない私に、ひとつひとつ丁寧に説明し、私を合格へ導いて下さいました。
これから芸術を学び、活動していく中での最高のスタートラインに立てました。
私を支えてくださった両親や予備校の先生方、友人に本当に感謝しています。ありがとうございました。

大川 曜 さん

東京
私立東洋英和女学院高等部 卒

合格大学:
東京芸術大学 絵画科 油画専攻

「合格体験記」

基礎科、夜間部と通い現役生の時は一次試験で落ち、昼間部で浪人することになりました。
一学期はゼミを一回受けることができました。ゼミはかなり自由な制作が出来たのでとても楽しかったです。あとは、ツラっ!と思ったら結構休んでいました。
夏期講習は現役のときに全部行って後半疲れてしまったので、中期はいきませんでした。休んでいる間は家にいたり、行きたい展示に行ったりして好きなように過ごしていました。そこからまたどばたに戻って後期を受けたら、疲れていない分良い絵が描けたのか何回か上位に入れたのでいい感じに調子に乗れました。
二学期は様々な制作をしている方達の話を聞く機会があり、絶対にこれはやりたいと思うことも増えたし、課題で行った場所も自分の中に残る場所となり本当に為になりました。
冬季講習には自分が考えてきたことも少しまとまり、ようやく絵がしっくりくるようになりました。そのまま入直も良い調子でしたが、受けていた私立は全落ちしてしまいました。一浪までと言われていたので本当に暗闇の状況でしかなく、今までの自分の良い絵も全てが間違っているのではないかとも思ってしまいましたが、その後の先生との面談で覚悟の話をしてあやふやなまま描かず全て自分で確信を持って描くことを決めました。しかし未だデッサンは決まらず、結局決まったのは一次の3日前でした。付け焼き刃ではないけれど付け焼き刃のように思えて不安でした。
一次試験の朝は描く前から結果が決まっているような気さえしていて怖くなりましたが、教室に入室してから描き始めるまでは「覚悟」とは〜  の言葉を延々と心で唱えていました。
問題文はずっと自分が考えてきた事と、モチーフだったので順番が回ってきたなと思いました。
二次試験はどばたにいる時と同じ感覚で受けて、30号もスケッチブックもやる事はやったので終わった後にはすっきりしていました。
発表の当日は不安な気持ちを殺す為にまだ結果を見てもいないのに『受かった』と唱えていたし、自分の目標が叶うように行動したんだから合格していると思うようにしていました。
自分は本当に面倒くさがりで何かあると適当に済ませるかすぐ逃げることばかりでした。絵からも何回も逃げようとしましたが、そうしたらとうとうどうしようも無くなるだろうからちゃんととする為に絵が必要で、絵だけが描ける環境があって、浪人して考える時間もあって、生まれて史上一番心に余裕がある中で絵が成る事を考え、自分は何を描くのか探しました。
三年間どばたで描き続けられたのは、好きなようにやらせてくれた先生達のおかげに他なりません、本当にありがとうございます。馬鹿なことも真面目な話もする友人がいて、家族が応援してくれて、いつも誰かに優しく支えてもらっていました。ありがとうございました。

須釜 衣緒里 さん

埼玉
県立芸術総合高等学校 現役

合格大学:
東京芸術大学 絵画科 油画専攻

「合格体験記」

もう極力受験なんて怖い思いしたくない、と思っていた高1の私はお金を払えば入れると言われている某美大の通信に通おうとしていましたが、気づけば芸大を目指してどばたに通っていました。
高校でもどばたでも、絵を描けば描くほど見えてくる自分の幼さや未熟さに嫌気がさした時もたくさんあったし、意味があるのかないのかよくわからない無駄な層、そんなのナイフで適当に引っ掻けば終わりなのに、畳のい草を一本一本数えて面相筆で描いては潰して盛っては削ってを繰り返すようなそんな私の作品を、ただ青いだけのものと優しく抱きしめて評価してくれる人も居れば、涙を流して蹴飛ばしてくれる人もいることに気づけました。
どばたに通うことができて本当に良かった。今までありがとうございました。

渡辺 春太朗 さん

東京
都立大泉桜高等学校 卒

合格大学:
東京芸術大学 絵画科 油画専攻

「合格体験記」

私は現役生の時からデッサンが不得意で計3回の試験共に一次で落ちています。
今でも決して自信があるとは思えません。
それでも描く事が好きという気持ちは一貫していて、一つ一つの作品に対していつも最後まで描きあげたいという気持ちで接していました。
なので試験本番中も緊張しながらも自分なりに楽しんで制作する事が出来ました。
私はすいどーばたでデッサン力の上手い下手だけでなく、作品として魅せるという絵の内容の大切さを教えてもらいました。
それはこれからも大事にしていきたいです。
そしていつも私の絵の事を真剣に考えて助言してくださった先生方には心から感謝しています。

土ヶ端 優子 さん

東京
女子美術大学附属高等学校 卒

合格大学:
東京芸術大学 絵画科 油画専攻

「合格体験記」

基礎科を含めると、五年すいどーばたに通いました。
藝大に落ち私大に入学しましたが、諦めきれず大学一年生の時、夏、冬、入直の講習会にすいどーばたに外部生として通い、大学二年生の時は夜間部生として大学の後にすいどーばたに通いました。
大学三年生の時、夏、冬、入直とまたすいどーばたに通いました。いつのまにか三浪もしていました。
大学ではもう自分のやりたい事、好きな制作をしていたし、しているからこそ正直制作なんてどこでもできて、藝大受験の事も、そもそも大学に通う意味も揺らいでいました。
描く絵も上手くいけば安心する程度、思い通りに描けないと、どうしようなんでこんなに下手なんだろうって一枚の作品の出来に一喜一憂して、精神的に参っていました。
そんな中、支えてくださった、応援してくださったのがすいどーばた美術学院、先生方、友人、家族でした。
特に私は講習会からすいどーばたに来ることが多かったので、講習会で初めて指導して頂く先生方も多く、しかも多浪ときてるのでその度に今までどういう制作をしてきたのか、大学ではどういった制作をしているのか などを踏まえ沢山のフォローをして頂きました。
本当にありがとうございます。私を支えてくださった皆様に心から感謝しています。ありがとうございました。

若林 彩 さん

東京
小石川中等教育学校 現役

合格大学:
東京芸術大学 絵画科 油画専攻

「合格体験記」

絵を描く事は昔から好きだったが、将来自分が藝大油画科に進学すると言っても、三、四年ほど前の私は恐らく信じてくれないだろう。
勉強をするのがあまり苦では無かったその頃の私に、「芸術系」を目指そうなどという意識は露ほども無かった。
今思うと、なんとなく学校の授業を受けて、なんとなくテスト対策をして、なんとなくそれなりの点に満足していた当時の自分は、本当の意味では脳みそも目も備えて居なかったようにすら思う。
そんな中でほとんど気紛れに手に取った絵筆が、こんなにも自分の視界を明るくクリアに広げてくれた。
なんとなく酸素を吸って二酸化炭素を吐き出す以外に、作品として自分の断片を世に排出すること、ひよっことはいえ製作者としての意識、思考を持つこと、何より今まで単なる視覚信号として見えていた世界が実はとても面白いこと。
油画を、すいどーばたを通して学んだ事ならいくらでも述べられる…。
自分はデッサンや油画を始める前からデジタルのデータ上に絵を描いていたので、どばたに通いだした当初は、現実として手に取れる画面や、気紛れで言うことを聞いてくれない画材達に相当戸惑ったように思う。
拡大、縮小、左右反転ができない!自分が選択した以外の色が勝手に暴れる!
乗算レイヤーもオーバーレイも、グラデーションマップも無いだと…!?そのギャップを楽しめるようになるまで、かなりの時間を要した。
もしかすると今も木炭や油絵の具に振り回されているのかもしれないけれど、そんな偶然で生まれる画面には、デジタルではなかなか再現できない存在感がある気がする。
進学した後には、そういった油画の油画たるところを追いつつ、デジタルと面白いこと融合できたりしないかな…などと思ったり。
なんとなく気楽に生きてきた自分が、いざ受験となった時に精神的に参ってしまうのも予想外だった。
自分は気づかないうちにこんなに絵を描く事にのめり込んでいたのか。
大荒れの心でもなんとかやりきれた事…いや、実際には気が狂って一周回って合格出来たのかもしれないけども。
ともかく狂い切れたのは、長期に渡ってご指導下さった夜間部の先生方や、生活面でケアをしてくれた両親、励ましてくれた友人達のおかげだったと思う。
この場を借りてお礼を言わせて下さい。ありがとうございました。

山本 恵理 さん

東京
私立順天高等学校 現役

合格大学:
東京芸術大学 絵画科 油画専攻

「合格体験記」

受験生活は私にとって決して生易しいものではありませんでした。
高2の頃、基礎科で気楽に絵を描いていた私にとって夜間部は本当に怖い場所でした。
1学期から夏にかけては特に酷い有様でした。
高い倍率や周りの人の実力に怯えて1ヶ月半も絵から逃げたり、夏季講習中は描きたい絵が分からず中途半端な絵を描いては落ち込んでいました。
もちろんそんな状態なので夏季のコンクールは一回も票が入らなかったです。
しかしそんな私に先生は真正面から向き合って下さいました。
分からないことだらけで的外れな質問ばかりしていましたが、それらに一つ一つ丁寧に答えて下さいました。
そのお陰で二学期は好きなものが描けるようになり、コンクールで2回合格ラインに行くことができました。
最後のコンクールはライバル視していた人が上位に入り、私は1票しか入りませんでした。
1票しか入らないなんて合格とは程遠い実力なんだ、と思いました。本当に悔しくて家で号泣しました。
泣きながら「絶対負けない!」と何度も言い、必死に努力しました。
入試直前はとにかく不安だったので積極的に質問しました。
不安で仕方が無かったのでうまくいかなかったデッサンはもう一度エスキースをして先生に見てもらったりしました。
わたしはすぐ自分を追い詰める性格なので、描いてる最中不安で頭がいっぱいになり息苦しくなることがよくありましたが、そんな時は教室の外に出て先生と話したりして過ごしました。
一次試験では一番苦手な想定が出ましたが、一次試験の直前にした沢山のミスと反省を思い出しながら描き、なんとか合格しました。
二次試験の1日目、2日目の深夜には、「翌日気をつける事リスト」という大量のメモをメールで先生に送りつけ「全部読んで不備があれば言ってください!」と無茶なお願いをしましたが、それもとことん付き合ってくださいました。
ここまでわたしが必死にやって来れたのはひとえに先生方、家族、友達に支えられたお陰です。
苦しい日々でしたが、今振り返れば、落ち込んで休んだことも、上手くいかず葛藤したことも、悔しくて泣いたことも全て無駄ではありませんでした。
どんなにダメでも先生方は向き合い続けてくれました。
本当に何と表して良いかわからない程感謝しています!!!藝大生になってもへこたれずいい作品を作りたいです!

芝口 房子 さん

千葉
県立大多喜高等学校 卒

合格大学:
東京芸術大学 絵画科 油画専攻

「合格体験記」

初めは、みんなのキラキラした豊かな絵が眩しくて自分の空っぽさに焦りを感じました。
でも、少しずつ自分で自分の事を拾うようにして積み上げていったら納得のいくようなものが見えてきました。
たまに自分では見つけられなかったものを先生がくれて、それが結構大切なものだった事が何度もありました。
絵を描く度に、積み上げて、要らないところは崩して、また積み上げて、調整して、そうやって強度が増していった気がします。
腐りそうになっても周りに素敵な作品がいっぱいあった事で気持ちが上に引っ張られて自分自身に集中できた気がします。
すいどーばたに来てこの環境や落ち着いた気持ちで絵を描き続けられた事がとてもいい時間になりました。
短い間でしたが得たものは大きいです!ありがとうございました。

中津 明優音 さん

大阪
市立工芸高等学校 卒

合格大学:
東京芸術大学 絵画科 油画専攻

「良い学校です」

基礎デッサンに熱心な生徒が多い大阪の美術高校で周りに負けじと勉強していた私は、ふと我に返るように思いました。
「デッサンは芸術か?芸術とは何だろう、こんな気持ちで大学に行ってもいいのか……」
周囲との価値観の違いに不安を抱き、東京藝大の合格作品にその問いのヒントを見出した私は、一念発起してすいどーばたで浪人する道を選びました。
定期的に行われるコンクール・全体講評・講師の丁寧な面談での指導。学習意欲を高めるのにもってこいのカリキュラムは、芸術を志す学生として、一人の人間として学びの楽しみを与えてくれる素晴らしい環境です。
一人一人がまったく異なる価値観を持って自分の表現に真剣に取り組む友人達に、豊富な知識と経験をもって導いてくれる先生達。本当に、たくさんのものを得ることができました。
そして私のわがままに応えてくれた両親を含め、周囲の方々が居たからこそ、こうして合格することが叶いました。
良い予備校を選ぶことができて、ラッキーだったと思います。

永山 健吾 さん

東京
都立大泉桜高等学校 卒

合格大学:
東京芸術大学 絵画科 油画専攻

「肉迫すること」

自分の制作テーマは意外なとこから見つかる。
人と話したり散歩したり、本を読んだり映画をみたり…ただしそれら日常、或いは非日常性を自分なりに深く思考し、時には疑うぐらいの覚悟がなければいけない。
そして真っ白なキャンバスに表現する恐怖、そこに正面から向き合う時に、初めてとてつもない楽しさと同時に、何か新しいものが生まれる期待が湧いてくる。
それは創り手に与えられた特権のようなものだ。
これから受験をするみなさんへ。言葉を信じず、言葉のもつ意味を信じてほしい。
時にはライバルや好きな人、家族、そして頼れる先生に存分に打ち明け悩んでほしい。
焦らなくていい。絵はいつでも描けるのだから。

松下 七菜 さん

静岡
私立浜松学芸高等学校 卒

合格大学:
東京芸術大学 絵画科 油画専攻

「合格体験記」

友人に、先生に、何にでも頼って、頼って、頼りまくった一年だった。
毎日欠かさず(笑)「こんなんじゃ受からないよ、描きたい絵なんか無いし、そもそも私は絵が好き?」と泣いていた。
しかも、みんなに心配されたいからという理由でだ。
そんな浅はかな私に真摯に、ある時は軽く向き合って「頑張ってるんだね」と言ってくれる友人がいたことは何よりもありがたかった。

夏が近づいた6月、参作室で聞いた、「ネガティブな奴はさ、受かってないよやっぱり。」という言葉がずっと心にある。
一年で基礎描写力と、ポジティブで軽やかな思考を身につけることにした。

夏、もっと伸びると思っていた…。四月の方が上手くかけていた。
しかし、ポジティブ思考を身につけた私は無敵だった。「一番下まで落ちたらどうなる?…あとは上がるしか無いだろ!」と、狂ったように繰り返した。
自分の良く無いところや、まだ足りないと思う箇所を友人に、言葉で説明することで自分が止まっていないことを自覚できたし、先生の気分に浸れて楽しかった。
優越感で生きている人間なのでみんなが頑張るそぶりを見せない時にやる気が出る。
毎朝誰も居ない外の机で問題集を解いて、夜は参作室で問題集を解いていた。
自分で自分を褒めてあげないとやっていけそうになかった。
絵を描いているとすぐ冷静さを失ってしまう私なので、自分なりの面白くてラフな考え方をした。
「うまくいかない」と泣いている1日目の私の肩に手を置き、「大丈夫、あとは私に任せて」という2日目の私…。
どうせやるなら楽な方じゃなく、楽しい方を選ぼうと思った。

一次前、虚無だった。絵を描くより三度の飯が好きだし!と思っていた。
絵が好きか否かもわからなかった。コンクールの結果を見て、悔しいという気持ちさえ湧かなくなっていた。
一週間後芸大で木炭デッサンをするのも他人のことのようだった。
ただ、歩めを止めたくない。その心だけは残っていた。
現状維持はある意味一番怖い状態だと悟った。
自分の現状を友人に、しどろもどろになりながら話した。
何かしなきゃ、という捉えられない不安に押しつぶされる毎日だった。
最後まで真面目でありたかった。

一次2日前、課題は「自由に描きなさい」私は何が描きたいのだろう 何を描く時に興奮するのだろうか…と考えながら近くの公園まで歩いた。
生物が好きだ。表面を撫でるみたいに絵で描いてる時が楽しい。
生きてる!生きてる!!と心の中で叫びながら描いていた。凄く楽しかった。

一次本番、世界の文字を見た瞬間に「オッ自由じゃん」という位軽い気持ちでいられた。
考え過ぎると私の絵はダメになる。
2日前と同じ構図でと決めた。教授が私の絵を二度見した瞬間私のボルテージは最高潮だった。
「もらった!このチャンス逃してたまるか!」「これが受からなかったらもう誰が受かるんだよ!!」と思える絵を描くと決めた。
一次の結果がわかるまでその話はしたくなかったから、オリーブの話などをした。出荷時期やもこみちの話を…よくわからない。
二次まで考えた。
私は、きらきらと、輝く絵が描きたいとふっと思った。鉱物が好きからかもしれない。
画面全体がひかるような…。初めて曖昧さを伴って、言葉の限界を感じて自分の作品を説明したくなった。
画面は何次元なのだろう?石みたいに何層も絵の具が重なって下層がちらちらと見えるそれは、二次元じゃないのかもしれないと思った。
そして、強い絵だ。
私の絵でみんなをぶっ潰す!ひかりかがやいてみんなを潰す絵を描こう。と意気込んでいたが、やはり用具を連れて8階までの階段は体力を奪われた。
それに、他人の絵を気にしだしてしまった。深呼吸は大切だと思った。
他の人は微塵も関係ない。自分が受かるためだけ。ここでメンタルやられて一生棒に振りたくないだろ!何のために一年「冷静に」って唱えてきたんだ!と言い聞かせた。
一瞬遠くの風景がF30号キャンバスの上に見えた。地面がキラキラしていた。少し、理想に近づいた。抜けた!という確信があった。この美しさを際立たせる為の周りにしようと思って作業した。
三日間、全く満足いく出来じゃなかった。私の一年やってきた人の肌の描写もつめられなかった。先生ごめんなさい。
でも、あの地面の、風景が、立ち上がった瞬間の快感は計り知れないものだった。それを信じるしかなかった。

発表の日、不忍池の傍のベンチに座って野鳥を見ていた。何も考えなくなかった。
ネガティブなことは、想像するだけでそれが実際に起こってしまいそうだったから、「受からないといけないんだ私は!今年受からないといけないんだ!それ以外の選択肢はない!!」と思った。
嫌な予感がしていない自分を信じた。校舎へ着く頃にはその想いは確信に変わっていて、結果を見ても驚きは無かった。未だに実感が湧かない。
周りが、幾度か、「松下なら受かるんじゃない」と言ってくれた。
その度に「無責任なこと言わないでよ、こんなんで受かったら苦労せんわ!!」と思った。
今自分がやっていることを肯定してくれる軽やかなわたしと、それをより良くする為スパルタ教育を施すわたしを共在させた。
真面目に、「ポジティブさや軽やかさをどう存在させ自分を律するか」を考えた。
真面目な人が報われるところを見せたかったのだと思う。必死に考えた日々が結果になるタイミングが来たのが嬉しかった。
合格はあくまで3月の自分の評価、それが過去を否定することも、未来を保証することもない。
受かってそれがより自覚できる。私は日本の美術教育を変えたい。
芸術の何を見ても、「やっぱ凄いねえ」「違う世界だね」としか言えない人たちに、違ったみえかたを提供したい。
知らない世界が死ぬほどあるからもっと知りたい。
一年間でより自分がやりたいことを深く考えられるようになった。
これからそれがもっともっと深まっていくのが怖くも、楽しみだ。
必死になる自分を肯定し続けてあげられたのも、先生の一言一言が、友人かつ敵の言葉、家族の様々な面からの応援、今まで関わってくれた人の眼差しあってのものだった。
自分に自信が持てない自分も少しだけ好きになれた。感謝してもしきれない。一生止まりたくないと思う。