※2025年は準備中です
A.Tさん
合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻
『合格体験記』
6回目の受験を経て、合格する事ができました。この結果は周囲の方々の支えのおかげです。
この一年は自分が何を諦めるべきかを強く意識して過ごしました。同時に、自分が日々使用しているものやその意義を見つめ直す時間も持ちました。(まだ全然理解できていませんが…。)
尊敬する方々が周りに多くおり、特に今年はその存在の大きさを痛感しました。多くの恩恵を受けました。まだまだ未熟で、自分の至らなさを実感することばかりですが、「素晴らしい」と思えるものに少しでも近づきたいという思いで制作に没頭できることが何よりも楽しいと感じます。私を尊重してくださった方々に心から感謝しています。本当にありがとうございました。
H.Hさん
合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻
武蔵野美術大学 油絵学科
多摩美術大学 絵画学科
出身校:加納高校
『合格体験記』
「何も描かれていない。」
これは三浪の秋、先生との面談時に自分が描いた作品を前にして自分で言ったコメントです。
三浪の時まで、自分が描いた作品はほぼ全てゴミでした。何を描いても、出来上がったものに価値があると思えず、自分が毎日ゴミを作るゴミ製造機になった気分で最悪でした。何を描けば良いのか分からなくなっていました。
ですが、三浪の入試直前から四浪の入試直前にかけて、少しずつ、人に見せても良いかなと思える作品が描けるようになりました。理由は主に二つあったと考えています。
①「美術におけるリアリティの再解釈」
②「浪人しすぎ」
美術作品はこの世界のリアルの一部を切り取ったものであるということは当たり前のことですが、それをただ口に出すことと実感として身に付けることの間には地球から冥王星くらいまでの距離があります。きっかけは何だったか曖昧ですが、四浪の時に作品を制作する態度に明確に変化がありました。
あとは浪人のしすぎです。受験をしすぎて、緊張や焦りと言った感情が段々希薄になり、常に冷静に合格と自分との間にある距離を測ることができるようになりました。
四浪の入試直前に先生に「美学が見える絵になった」と言われました。自分が描きたいもの、描きたくないものがはっきりして、自分でもゴミでなく絵を描いている感覚がありました。試験でも、それが教授に伝わったのかなと思います。
4年間若干長めの浪人でしたが、自分で一歩ずつ成長できた気がします。入りたい大学に入れて嬉しいです。
これからも努力あるのみです。
H.Mさん
合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻
東京造形大学 美術学科 絵画専攻領域
出身校:北海道釧路江南高等学校
『多浪のすゝめ』
一、驕ると落ちます。
私は全6回の受験の中で4回1次落ちを経験しました。敗因は驕りとパニックだった気がします。必勝法は無いかもしれませんが、自身の姿勢を省みて人生に真摯に向き合えば、どのような結果になっても強く立っていられると思います。
一、どばた以外の時間を大切にしたい。
私はこの一年、予備校では自分に必要な技術を学び、試験時間内での制作プロセスや作戦を練ることに集中して取り組みました。そしてそれ以外の時間は絵画とは全く違う分野に費やしました。
そしてたくさんの人と出会い、世界が広いことを“実感”しました。分かってはいても、その大海を目の前にした時には身震いするわけです。
その為にはバイトも活用しました。他者と関わり、社会を知る貴重な機会です。そこには時給以上の価値があります。
1年間の過ごし方については他者を参考にしても構わないけれど、何事も自分で選択し、責任を持って仕上げることが大切だと思います。
一、問題は1つずつ解決したほうがいい。
浪人が重なるほど思考は絡まり、辿るのも難しくなりました。講師との面談は、結び目を見極めてひとつずつ丁寧に解く作業でした。実利的な指導をされはじめたら、ある程度解けたサインだと思います。
以上
最後にこの場を借りて、私の長い受験生活を支えてくださった皆様にデッカイ感謝とイッパイのラブを心より申し上げます。
そして支え合った戦友たちへ。絵画と世界に向き合い続ける限り私たちは表現者であり、友であり仲間であることを強く願います。それぞれのタイミングで社会へ飛び立ち、オモロいことを見つけましょう。分かち合うばかりでなく、時に反発する豊かさを持ち合わせたこの関係性を私は大切にしたい。全てのものが豊かでありますように。
M.Tさん
合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻
多摩美術大学 絵画学科 油画専攻
出身校:東京音楽大学附属高等学校
現役は受験せず、
一浪目は多摩美補欠、藝大は2次落ちで
二浪目に多摩美と藝大に合格しました。
一浪目の夏期講習あたりで
自分が喋りやすい、落ち着きやすい絵柄が出来て、同じような絵柄でずっと描いていました。
ほぼアイディア勝負みたいな絵柄だったので
ダメな時は、面談で先生と相談して
良かった時は、いつか使えるアイディアとして取っておきました。
描いていくうちに
"いつか使えるアイディア"の在庫が増えていきました。
その蓄積のおかげか、たまたまなのか、
1次試験では"いつか使えるアイディア"が使えそうな出題がでて、出題と混ぜ合わせて描きました。
出来が悪かったので合否発表まで絶望していたのですが、結果的には良かったので良かったです。
2次試験では
1日目に出題の難しさに頭をかかえて
いつか使えるアイディア集の中に使えそうなのがない!全然思いつかない!とパニックになり、
ゼロから絵を構築しようとして、スケッチブックの上で迷子になっていました。
キャンバスは白紙のまますいどーばたに戻り、
クラスで課題文の読解方法や出題分析をしてもらい、
自分は何も分かっていなかったことに気づきました。
試験中に考えた案は全部やめて、
担任の先生と使えそうなアイディア集から1つピックアップし、それと出題を混ぜ合わせて描くことになりました。
最終的には最初に感じていたことと上手くまとまったので良かったです。
2日目はキャンバスの作業と、余った時間で軽くスケッチブックをまとめました。
とにかく完成させることだけを目標に頑張りました。
3日目の面接は緊張しながら、曖昧に答えることが出来ました。
すいどーばたには約2年間お世話になったのですが
色々な事がありすぎて、ここで簡潔にまとめるにはもったいないくらい濃すぎる時間でした。
なにより、素敵な友人達と同じ目標に向かって励めたことがすごく楽しかったし、苦しかったです。
私の人生の中ですごく大切な2年間になりました。
これからもきっと大変なので、様々なことに対して精一杯沢山悩もうと思います。
今までありがとうございました。
M.Tさん
合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻
出身校:都立総合芸術高校
「自分の描きたい絵」とそれを描ける「理想の作者」を視覚/言語化し、計画を立てた
①現時点での自分の制作に関連する、可能な限りすべての記録をとる
(エスキースの質や量、制作時間、講評時の先生方の話や所作、自分の絵を見た知人達の表情、構図を思いついた日の前後でしていたことや寝た時間、会った人など)
②尊敬する800人ほどの作家の経歴、コンセプト、制作方法、作品の特徴や、見たときの印象などをまとめる
③心の底からすごいと思う作品を3000点ほど画像で集め、そこから自分が感動する画面の特徴を視覚/言語化する
統計をもとにその時点での自分の課題とその解決法、合格までに必要な能力をリスト化した
計画は数ヶ月に一回確認し、自分の変化に合わせて随時修正した
これらは受験後も同じように続けていこうと思う
H.Mさん
合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻
出身校:岐阜県立加納高等学校
「冷静に落ち着いて楽しく大切に」と一次も二次も何百回も心の中で唱えてました。トイレに行く時には「愛コメ(愛を込めるの略)..愛コメ..愛コメ..愛コメ.....」とブツブツ言いながら藝大の廊下を歩いてました。もちろん不安はありましたが、夏期講習で担当してくださった横田先生の「大事にしようと思って描かれた絵が雑に扱われるはずがない」という言葉を信じて自分なりに愛を込めて楽しく大事に描き切ってきました。
今年の夏あたりから絵の方向性が見え始めて、走りたい方向がよく見える!という感じになりました。それからはコンクールの結果がどうであろうとやることやるだけだな〜くらいに楽観的に捉えてました。
精神的な安定と技術的な安定の両方が合格の為には大切だと思います!
二浪目の今年は絵を描く以外にも色々な経験をしてかなり有意義に過ごせたと思ってます。
大阪や愛知に行って本物の壺を見たり、お茶屋さんに行ったり、屋上で草を燃やしたり、金継ぎを自分でしてみたり、秋葉原のメイドカフェに行ったり、、、、
実際に経験して得た知識と知った気になっている知識ではまるで違うものだと絵に現れて初めて気づきました。意外な経験が意外なタイミングで自分の絵と繋がってきて、運命のように感じる瞬間が何度もありました。その運命的なビビッと感を感じる度にサイコー!絵を描くって楽しすぎる!と思って嬉しかったです(激アツ状態)
担任の五十嵐先生には本当に感謝しています。
常に私を尊重してくれて、程よく自由にさせてくれたおかげでこの一年すごく楽しかったです。
面談ではよく分からないことばかり言って迷惑かけたと思いますが、忖度しないで自分の意見を沢山話すことができて私は先生と話す毎日が楽しかったです。
いつも私の絵を信じてくれる、私以上に頭を悩ませてくれる人がいることが何より支えになりました。
面白い話をたくさんしてくれた友達、私に関わってくださった先生方、助手さん、そして応援してくれた家族に感謝を伝えたいです。ありがとうございました!
S.Wさん
合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻
東京造形大学 美術学科 絵画専攻領域
多摩美術大学 美術学部 絵画科 油画専攻
出身校:日本大学豊山女子高等学校
『合格体験記』
私は普通の人間です。人の言うことをちゃんと聞くし、時間も守ります。周りの大人からはいつも優等生だと言われてきました。でも、普通であるがゆえに、変であることに憧れていました。そんな私のような人に、この文章を読んでもらいたいです。
もともと私は日藝を目指して、すいどーばたに通い始めました。しかし、そこで大きな影響を受け、藝大を目指すようになりました。
受験生活の中で、友人たちのように絵に対して情熱を持てないことが悩みでした。私は、見た目がよければそれでいい絵だと考えていました。でも、友人たちはそれぞれの絵に自分なりのストーリーや理想を持っていて、正直羨ましかったです。そのせいで、「自分は絵を描くのに向いていないのではないか」と不安になったこともありました。
しかし、そこで私は気づきました。「自分は職人気質ではない」と。楽しく描くことよりも、多くの人に認められる“いい絵”を描こう。じゃあ、人を惹きつける絵ってどんな絵だろう?――そう考えたときに思いついたのが、「見る人が『これは描くのが大変そうだ』と感じるような絵を描こう」ということでした。そこから私は、カロリーの高い絵を描き始めました。
二浪の夏、ゼミで現在の構図のきっかけをつかみました。そこからは、コアコンセプトを見つけ、挫折を経験しながらも成長することができました。
自分にとっては普通のことでも、突き詰めていけば、誰しも少しは“変”なものなのだと思います。逆に、絵描きらしく振る舞おうとしたり、自分を飾ろうとすると、本当にやるべきことが見えなくなってしまう気がします。自信を持って、淡々と修練を積んでください。
R.Mさん
合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻
出身校:静岡県立 清水南高等学校
『自分と向き合うこと』
長い浪人生活で技術は十分につけたので、この1年は持っている技術を使って「何を表現したいか」だけしか考えてこなかったなと思います。
三浪目は自分のペースで頑張りたいと9月から昼間部に入学しました。
制作をする時間そうですが、制作をしていない時間に何を見て、何を考えているかを大切に生活していました。
現役も入れて4年分の作品を見返して思ったのが、自分が変化する度に絵も変化していくということでした。美術とは生き方なのだと思います。自分にしか描けない絵を描くためには、技術を上げることも人の作品を見ることももちろん大事ですが、1番は自分をよく知ること、向き合うということなのだと思います。
それからこれから受験する人達へ
私は1次で構図をミスったり、2次で指定外の画材を使って注意を受けたり、面接でめちゃめちゃ失敗したりして死ぬほど落ち込んで絶対落ちた…と合否が出るまで泣きっぱなしでしたが、結果あんなに失敗しても合格できたので焦らず無駄に落ち込まず決して諦めずに試験を最後までやり遂げてほしいなと思います。
最後に、弱音ばかり吐いてもずっと真摯に向き合ってくれて、1日目に終電まで対策をしてくれた先生には感謝しかありません。そして長い浪人生活をずっと応援してくれた大好きな友人達、家族の支えがあってここまで諦めずに来ることが出来ました。本当にありがとうございました。これからも制作頑張ります!
R.Aさん
合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻
東京造形大学 美術学科 絵画専攻領域
出身校:都立富士高等学校
『失敗の積み重ね』
最初に、私の考えを一緒になってまとめてくれた先生、信じて支えてくれた両親、多くの良い影響を与えてくれた友人には本当に感謝しています。
高2から2浪まですいどーばたには4年間お世話になりました。
現役の頃は夜間部に通っていました。今思うと1年の大半は受かる絵を描こうとしていて、目的を忘れていたと思います。
私は昔からデジタルで絵を描いていて、基礎科に来て初めて木炭と油絵具に触れました。美術っぽい、絵画っぽい、高尚なことをしようと、自分の好きなことを否定し続けていて、次第に何を描いたらいいのか分からなくなっていきました。それまで集めていた資料を一新してしまう始末でした。
そんな自分に嫌気がさして、入直で課題とは別に自分の好きなサイズで自由にドローイングをするようになり、少しずつ絵作りが楽しくなっていきました。それがきっかけで、試験の直前で初めて自分なりの表現にたどり着き一次は通過できましたが、この時点で油がまったく決まっておらず、二次試験で落ちました。積み重ねが足りていませんでした。
1浪目では昼間部に春から通い、今度は、二次試験で落とされないように、とにかく早くスタイルを決めて枚数を描こうと必死に模索しました。
油でいろいろ実験し、独特で目立つ絵肌を作って後から内容をこじつけていました。最後のコンクールで上位に入り、先生に「これで行ける」と言われて、自信満々だったので一次試験で落ちてしまったときはショックでした。
絵に納得できていない部分があったのを、今からでは間に合わない、先生は良いって言ってる、と自分に言い聞かせて無視していたのが良くなかったと思います。
2浪目も春からどばたに通っていましたが、ある程度自由に過ごそうと色々なことをしました。バイトしたり、友達とグループ展をやってみたり、イベントで作ったものを売ったり、趣味のイラストを描いたり、、、。
今年からどばたのカリキュラムに追加された、全員参加できる選択型のゼミがとてもよかったです。
絵の本作りゼミで、風景をスケッチして歩くことが案外自分に合っていることに気づき、それが今年の制作の基盤になりました。沢山インプットがあることで、自分の興味関心について解像度が高くなり、画面上で何を実現させたいのかが分かってきて楽しさを感じるようになりました。
また、心に余裕ができたことで、課題文を冷静に読めるようになり、何が求められているのか?それに対し自分ができることは何か?というところまで気が回るようになりました。
一時期型に縛られはしましたが、それを乗り越えることでかえって自由に立ち回れたので、課題に臨機応変になったと思います。
最初は自分らしさを前面に出そうと必死になっていましたが、人が見ている景色が少しずつ異なるように、結局何をどう描いてもその人の絵になることに気付きました。立体も、イラストも、デッサンも、油も、なんでも自分が大事とするところは共通していて、ただ気付かないだけでした。
私は描く前に考えすぎて筆が止まってしまいがちなので、今は描いてみて振り返ることに重きを置いています。意識しなくてもどこかで必ず繋がります。
この長い失敗体験記も、合格した瞬間合格体験記に変わっただけです。
これから受験する方の参考になればと思います。
今できることを続けていって下さい。応援しています!
R.Tさん
合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻
出身校:福島県立福島高等学校
『合格者体験記』
こんなことがあった。
N先生があれはゴミ処理場の煙突だと光を指し示していた。白い塔が煙を吐いてぎらついている。我々はどばた本館の屋上で豊島区を見渡していた。浪人生たちが投げ捨てた作品群もあそこで燃やされているのか。そう得心がいった。
なんだかんだで季節は巡り最終合格発表の日となった。本館の裏口でぼんやりとしていると、視界の端から現れたT先生が「よう!」とチャリで颯爽と通り過ぎていった。なんだか春っぽい情景だなと春めいた馬鹿頭が判断した。
3浪!どばたに漂着してから3度も池袋の陽春を楽しむ羽目に遭っていた。
そのうちネット上に最終合格者名簿が張り出された。しかしそれを見る勇気がない。えい、と突発的に裏口を飛び出し街をかき分け進んでいった。ビルの影から、あの日屋上で見た白い塔が現れては消えていた。お前の根元を見てやる、と白い塔を追った。無謀である。
合否どちらにも属さぬままの道行で鳩と出くわした。鳩は羽ばたきもせず大の字で気流に乗り空中で静止していた。私も鳩もおかしな風体だった。
1時間程で例の塔の全体を臨む陸橋に辿り着いた。説明を省くが結論塔に根元はなかった。拍子抜けした。そういうわけだからそろそろ覚悟を決めろ、と塔が私を見下ろした。
目を薄めたままスマホで合格者名簿にアクセスする。見ろ!無理!見ろ!無理! LINEを起動しすれば彼方のN先生から「気合いを入れて!」と信号が送られてくる。 一転気合十分の武道家の心持ちで、液晶に一本拳突きを入れた。
名簿に自分の受験番号を見つけた。衝撃的だった。身震いした。私のいた陸橋の真下にはJR線の列車が爆音を立てて往来していたため、比喩ならずガタゴト揺れていた。
我藝大に合格せり!ここで祝砲でも打ち上げてくれたらこの話にオチがつくんだけどなぁ、と塔を見上げれど何も起こらない。当然である。
とはいえこれでやっと己の人生のレールを己で敷けるようになるのだ、と遠方に浮かぶ池袋駅の影を振り切ろうとしてゲラゲラと陸橋の階段を転げ落ちた。傍で小石を喰んでいた鳩が驚愕した様子で逃げていった。長すぎた曇天だった。
K.Tさん
合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻
武蔵野美術大学 油絵学科 グラフィックアーツ専攻
武蔵野美術大学 油絵学科 油絵専攻
出身校:広尾学園高等学校 現役
『合格者体験記』
忘れてばかりの一年でした。
新しい表現を教えてもらう度に前回の描き方が分からなくなり、なんなら一次試験当日も、自分がこれまでどんな絵を描いていたか忘れてしまったので結構焦りました。まあ意外と手が覚えてくれていましたが、周りの受験生の個性的で完成された絵を見て、これは落ちたね!と思ったのを覚えています。
一次試験の合格発表から二次試験までの一週間は本当にあっという間でした。先生のアドバイスで油絵の方向性を大きく変えることになり、これまでの色味や絵肌を封印することに不安はありましたが、新しい描き方を試せることへの嬉しさもありました。
本番は、普段通りに楽しむこと。それだけを考えていたので、不安も緊張もありませんでした。
やはり何もかも忘れて、得たもの全てを更地にする瞬間が必要なのだと思います。空っぽの頭に新しいことを入れてあげると、手が勝手に進化してくれるのかもしれません。
余計なことも、無理もせず、自分の責任が取れる範囲で絵を描くこと。これが本当に大事なのだと、この一年で知ることが出来ました。
藝大に合格できて、これからの毎日を、自分の好きなことを好きなだけ続けていけるというのは、すごく幸せなことだなぁと改めて思います。これからも、軽く、ゆるく、気の向くままに制作を続けていきたいです。
最後に、一年間を通して合格までの道を作ってくださった先生方。特に終電ギリギリまで一緒に考えてくださった担当の先生。何より、毎日おいしいご飯を作って帰りを待ってくれていたお母さん。本当に、本当にありがとうございました。
Y.Tさん
合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻
出身校:湯沢高校
『合格者体験記』
試験はもうとにかく描きたい絵を楽しく描こうと思った。型だとかなんだとか、いらないものは全部削ぎ落として、自分がただ安心できるような絵を描こうと思った。
R.Hさん
合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻
出身校:姫路西高等学校
『絵画に向き合った1年』
私は1年半前まで油絵の具を触ったこともなく、絵画の知識も全くない状態から始めました。
最初は、ただ絵を描くのが好きというだけの無知な人間がこの世界に飛び込んでいいのか、と不安だらけでしたが、先生方は暖かく迎え入れてくださり、再受験の私でも周りの受験生と同じように真摯に向き合ってくれました。
私は絵を描くことがずっと好きで、どんな絵を描くか考える時間だけでなく、物の形を追い、絵の具を重ねていく作業がすごく好きです。体力的にしんどい日はたくさんあったけれど、絵を描くこと自体が嫌だと思ったことは一度もなかったです。
絵画がどういうものなのか、美大受験がどういうものなのかを講評会を通して理解することができたこの1年は間違いなく意味のある時間だと思います。
夏期講習で担当してくださり方向性を決めるヒントをたくさんくれた先生方、私のためにたくさんの参考画像を集めて最後まで有益なアドバイスをくれた北澤先生、
本当にありがとうございました。
M.Sさん
合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻
出身校:精華学園高等学校
『合格体験記』
高二の夏、地方の進学校に通っていた私は本格的に美術の道を目 指すために通信高校に転校しました。当時は思い切った決断に不安でいっぱいでしたが、その分がむしやらに地元の美術教室で努力し、ひたすら基礎を学びました。今思えばその時の熱意が2年間の浪人生活を支えてくれていたと思います。
予備校生活では、自分の機嫌のとり方、コントロールの仕方を自分なりに考えて、出来るだけ前向きな気持ちで日々を送れるように努力しました。そのため、過ごし方はマイペースでしたがこんな私に親身に教えてくださった先生には本当に感謝しています。
今回の二浪目は10月から通い始めました。9月までは、色々な場所に行き見聞を広めたり、公募展に出すために描いたことのないサイズの絵を描いたりと、受験から少し離れて自分の思想を見つめ直す機会があったのも良い結果に繋がったと思います。
先の見えない浪人生活でしたが、私を信じて見守ってくれた家族や友人のおかげで諦めずに頑張ることができました。
また、私に合った方法で根気強く指導してくださった先生のおかげで、安心して試験に臨むことができました。
ありがとうございました。
私は本当に周りの人に恵まれていたと思います。この感謝を忘れずにこれからも精進します!
M.Iさん
合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻
『合格体験記』
現役、一浪と木炭で落ち、二浪目で合格しました。
合格の基準は、自分の例を取っても回りを見ても、如何に自分らしさが出ているか、だと思います。
自分らしさというと、小手先のテクニックや技法のオリジナリティや独創性を想像してしまうかもしれませんが、それよりも、よりその人が普段何を見て、何になりたいと心から思っているか、が大きいと思います。
芸大を目指して描いていると、芸大に取って貰うために自分の絵を曲げなければいけないような気がしてきます。私も一浪の時はそう考えていました。
ですが、自分が何を描きたくて絵を勉強しているのか、そのシークエンスの中の一枚を見せれば、芸大も充分にそれを汲んでくれるように感じました。
もし、自分の絵のイメージが決まりきらなければ、まずは芸大入学以外の目標を置いてみると良いと思います。私は、ドイツに行くことを目標にこの一年間描いてきましたが、ドイツの画家、ドイツ大学の教授の絵などに触れる新鮮さの中で、心改まって絵に向き合えたように感じました。目標はどこかに出展することでも良いですし、絵以外の小説や音楽、映画についてに目標を立てて、それについて調べてみたりして、新しいものに触れあってみても良いかもしれません。絵は向き合うだけでは成長し辛いものです。人生が豊かになるだけ、自ずと絵も豊かになっていきます。これから受験される皆さんも、あまり気負いし過ぎずに頑張ってください。
Y.Nさん
合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻
東京造形大学 美術学科 絵画専攻領域
出身高校:駿台甲府高校 美術デザイン科
現役の時は油画科ではなく他の科を受験しましたが、やはり自分は絵を描きたいという思いが強くなり、思い切って藝大油画科を受験することを決意しました。
藝大油画科の倍率が高いことは知っていましたが、当時の自分は「どうにでもなれ!」という気持ちで、どばたの入学手続きをしたのを覚えています。
浪人生活は辛いんだろうなーなんて当時思っていましたが、楽し過ぎる3年間でした。
面白く刺激的な友人にたくさん出会い、たくさん遊び、絵についても多く語り合いました。そうした中で、先生方からの学びも大きな支えとなりました。一浪の頃には沼田先生から油絵の具の使い方を一から教えていただき、二浪・三浪目には土屋先生にさまざまなアーティストや作品の作り方を教えていただきました。
技術だけでなく、作品への向き合い方や表現の幅も広がり、とても充実した時間を過ごすことができました。
3浪目には、自分の好きなことや作りたいものが明確に見えてきて、デッサンも油絵も楽しみながら制作できるようになりました。
一次試験では、緊張することなく、落ち着いて楽しみながら取り組むことができました。
二次試験は初めての経験で、どうすればいいのか分からないまま、ただひたすら描き続けましたが、自分の表現を信じて最後までやり切ることができました。
しっかり学校に行って友達と先生といっぱい話してコンクールで上位とって準備不足がないように対策することが、試験を楽しむ一番の方法だと僕は思います。
お世話になりました先生方、応援してくれた友人達、快適に制作をさせてくれた助手さん方、そして浪人をさせてくれた家族には感謝しかありません。本当にお世話になりました!
M.Aさん
合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻
出身高校:Greater Brighton Metropolitan College
1浪にして初めての藝大受験、数十秒の間完全に色彩を失った日の事を鮮明に覚えています。2023年度東京藝術大学油画2次試験の結果発表のとき、何を思ったのか友人3人と僕で上野公園に発表を見に行こうとなり、前日にみんなでお泊まり会をして団欒としたのち6時半にアラームをセット、薄寒い黎明の中サイドステップを踏みながら上野に向かいました。到着して少しブラブラ、すぐに時間は来ていざ待ち侘びた発表、不安なんて全くなく、頭は冴え切っていて笑顔以外の表情の出し方なんて忘れていました。10時が近づくにつれてスマホの発表ページの更新をする間隔が短くなっていって、画面には脂汗をかいた指の跡がびっちり直線を作っていて
“ポンッ”
絵画科油画専攻の文字を視認してコンマ数秒でタップ、観る前に画面を手で覆って深呼吸している間に友人達の歓声が聞こえて彼らが通ったのを察しました。いざ自分の結果を見ようと覆っていた手を外して画面を確認。
何もなかった
何度も再確認再確認再確認再確認して、自分が落ちた事を知りました。息を吸いながら画面から目を上げて公園の風景をみたら驚いたことに世界が、誇張なしで本当に白黒に見えました、高性能なカメラの写真を加工したような自然な白黒。音も、友人達の歓声も聞こえているんだけど聞こえてない様な。30秒くらい、ジーっと前を見つめて真ん中からジワッと少しずつ色が戻っていきました。3人の友人達は合格していって、僕は置いて行かれたんだな、理解も納得も出来ないまま宙ぶらりん。
そこからはひたすら我武者羅に
もっとカッコ良く、もっと興味深く、もっともっと自分が出来る事全部やって、彼らに追いつける様に。描いて、否定されて、描いて、否定されて、たまに肯定されて。
そんな千切れた細い糸を紡いでキャンバスにしていく様な作業の繰り返し。
僕はもう1人だからって考えて、一生受からないんじゃないか、もうあの一回が最初で最後のチャンスだったんじゃないか。受かっていった友人達の絵が日に日により良く見える様になって何処か一線みたいなものを超えたときから追いつけないって考えが形を持って確信になった様な気がしました。ぐちゃぐちゃに泣き腫らしてピンク色のゲロを吐いたのを覚えています。
そんな精神状態で受けた2浪目の受験
目の前の石膏像を描きなさい
ブッサイクなつぎはぎだらけの白い全裸の石像を描かされて酷く憤りながら試験会場から帰りました。当然落ちました。
この時は落ちたとき、むしろちょっとした解放感さえありました。当時の試験会場内で最も石膏像が嫌いな男である自負があった僕はあんなものを真面目に描くぐらいなら腹を切って死んでやると思っていたので、普通に不真面目に描いて、普通に落ちました。(個人的な話ですよ、楽しく描ける人は凄く素敵だと思います。)
結果は分かり切っていたし、ただ受験の緊張感から解放されただけ。残ったのは3浪目という直視出来ない現実だけで、ずっと自分に篭って一人で戦って、帰ってきたのがこれかってやるせなさで胸がパンパンに膨れ上がっていました。
3浪目の初め、自我と気力と何もかもを失って溶け切っていた僕にとある友人が言ってくれた言葉はこれからもずっと大切にすると思います。
「絵は一人じゃ描けないからなぁ」
本当にハッとしました。そこからは一人じゃなくて、僕には影響された作家達がいる事、友達、家族、先生方が支えてくれている事に対して凄く自覚的になった様に思います。適当な綺麗事に聞こえるかもしれませんが、本当にそうだった。あとはもう快進撃です。自分が不安に思う絵を自分の絵を見てほしい人、認められたい人、友達に見せた。どう思うか、何が悪いと思うか、聞くことが怖くなくなりました。言われた事を咀嚼して、描いて描いてを繰り返して、大好きな絵ができて、自分の大好きな自分の絵を細分化して、テクスチャ、技法、デザイン性、配置、コンセプト、なんでも良い、どこが好きだったのかを自問自答して、足して引いて引いて足して迷ったらすぐに自分が憧れている人、自分と一緒に戦っている人、自分が認めて欲しいって思うような人、何より身近な先生達に頼って、そんな事をしている内にあっという間に3回目の試験。
一次試験は前日の前日の深夜まで友達と先生と自分の絵について、色んなパターンを試行錯誤してなんとか通過。
二次試験直前、絵を描く事において僕の最も尊敬する人からたまたま連絡があって、捕まえて徹夜で考えと絵をまとめました。
二次試験中も一緒に考えたスケブと絵があったから何も怖くなかった。凄く難しい課題でしたが、楽しくさえありました。
合格
思えば本当に長くて、本当にあっと言う間だった
色んな人が僕を助けようとしてくれていた事、人間関係に信じられない程強く恵まれていた事に3浪目で気づきました。
これらの出会い、繋がり、自分の絵への意見をもらう貴重な場所、コンクールでは自分の立ち位置が明確になりますし、友人のみならず、先生との面談で自分の先に実際に作家として活動をしている様な人としっかり話せる機会を得れる予備校という環境は自分を大きく成長させてくれました。
この体験記を通じて伝えたい事は本当ただ一つで「絵は一人じゃ描けない」これだけです。友人、家族、恋人、先生を大切に。頼り散らかしましょう。
用は
Viva人生。
これからも全力を尽くします。