日本画科 2025

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N.Kさん

合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 日本画専攻

『伝える』

どばたでは4年間お世話になりました。

地方の美術館で見た日本画に心惹かれて美大への進学を考え始め、美術系の高校でもない私がどばたに行って初めて石膏デッサンを描いたのは、高校3年の春でした。

右も左も分からない状態で夜間部に入り、いざ授業が始まるとみんな上手で、「このクラスの中で私が1番下手なんじゃないか?」「もっと早く受験対策を始めていればよかった」と絶望し悔しい気持ちになったことを覚えています。
悔しさを原動力に、極端なこと(講評でデッサンが黒いと言われたら描き出しからh系の鉛筆を中心に使うなど)をして描いていたら1年で周りと張り合えるくらいに成長しました。思い切って極端なことをすると丁度良いところが測れる気がします。
しかし本番はまさかのジョルジョ3体で、ほとんど組み石膏を描いたことがなかった私は動揺もあり1次で落ちてしまいました。

枚数を重ねていくたびに上手になるもので、1浪、2浪は技術的に上達して石膏デッサンが得意になりました。1次は通るものの、着彩は苦手で2次落ち。

3浪目は春から友人と切磋琢磨することを誓い合って制作をしていました。お互いに教えあったり、上手な人がいたら質問したりして充実した日々を過ごしました。
着彩は相変わらず良い時と悪い時の差が激しくて安定しませんでしたが、描くことが嫌にならないように、適度に休みつつ楽しく描くようにしていました。

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ついに迎えた入試当日、1次はパジャントの正面より少し左斜め、逆光の難しい位置で、心の中で「どうしてこんな位置に当たるんだ!」と嘆いていました。
でも今までたくさん描いてきた自分なら描けるはずだし、同じ位置の人のなかで1番上手に描くぞと集中して描きました。
動揺を抑えるために何度も御手洗に行って深呼吸をしたりして、何とかいつも通りの完成に持っていけました。

2次は野菜が沢山出題されて、メインに設定した白菜とカボチャの色合いと形の綺麗さに感動しながら描きました。
試験室はとにかく寒くて上着を着ても体が勝手に震えていました。こんなことが原因で実力を発揮できないまま終わったら悔しすぎる、と思って最後は死ぬ気で描きました。貼るカイロを予備で何枚か持っていけば良かったです。

試験が終わった後はとにかく後悔しっぱなしで、合格発表までは80%くらい落ちた気でいたので、最終合格者の欄に自分と、今まで切磋琢磨してきた友人の番号が並んであったときは信じられなかったです。すべてが報われた瞬間でした。
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振り返ると、モチーフを組み始めたときの直感で自分が感動したことを最後まで大事に、絵を見た人に伝えようと思いながら描けたのが良かったんだと思います。
良い形をとる、綺麗な色を使う、空間を出すのはもちろんですが、
何よりも大事なのは自分が感じたモチーフの魅力、感動を伝えることだということに最後の最後で気づきました。

不安と緊張に包まれるなかで、いかに素直に自分の直感を信じるか、そして伝えられるかだと思います。

私がここまで努力し続けられているのは周りの方達のおかげです。
いつも支えてくれる両親、友人、どばたの先生方、関わってくださった方達には本当に感謝しています。

これからも精進していきます。
ありがとうございました。

M.Yさん

合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 日本画専攻

『雪が降る』

すいどーばたでは2浪からお世話になりました。現役、1浪は地元新潟の絵画教室でひとり石膏像とにらめっこする日々でした。周りに藝大を目指そうなんて人はひとりもいなくてネットに流れている過去作品と見比べて、「なんとなく違うんだろうな」とぼんやり感じていました。

どばたに来てからは何が良くて何がダメかを理解することから始まり、自分がゴールまでとても遠いことを実感しました。周りはずっとどばたで学んできた人ばかりで受験セオリーも理解しているし、実際に合格した先輩達も知っている。地方出身の自分が本当に戦える世界なのかとも思いました。デッサンはとても癖っぽい描き方で、着彩はバルールがあっていなくて未完成だというのが初めての講評でした。

デッサンはとにかく形が合わない、顔が似てないことに苦しめられました。特に顔が似ているかについては最後まで言われ続けました。形の確認が甘いんだと思ってたくさん測って何度も離れて見るようにしていたのですがそれでも指摘され、何が違うかわからない期間が長かったです。
2浪の2月、横たわった奴隷を描いたときに初めて先生から「ぱっと見の印象が合ってていい」と言われ、私は印象を合わせるプロセスが足りなかったことに気づきました。普段とは違う横たわった状態だったことからいつもより冷静に観察して描いたことが良かったのだと感じました。その足りないものに気づいた結果、2浪で初めて一次通過ができました。

着彩は全体感がない、奥行きを感じない、書き込みが足りない。とにかく足りないものだらけでどこから改善したらいいかわからない、そもそもどうやったら改善できるかもわからない状態でした。2浪は何も進歩を感じることなく終わり、3浪になっても転機になるような作品はなかなか描けなかったです。いつも同じことを指摘されることで焦りを感じ、またデッサンも安定していい作品を作れず去年は通ったのに今年ダメだったらと追い詰められ不安と悔しさを日々感じていました。
結局、先生から「これは合格できる」と言ってもらえたのは3浪一次試験後に描いたラスト一枚だけでした。その一枚も自分では自信のある出来ではなく、何が良かったのかは先生に聞いてみないとわかりませんでした。普段の絵は満遍なく描きすぎてどこを見たらいいかわからない、余白が少なく画面いっぱいに情報がある印象だったが、最後の一枚はこれまでと全く違う印象でとてもいい。明日この雰囲気で描いてくれればいい。と言うのが最後の講評でした。

3浪の一次試験終わり、大学を出ると雪が降ってました。二次試験1日目の終わりにも雪が降りました。東京で雪が続いたこと、久しぶりに見る見慣れた雪に背中を押してもらった気持ちになり、これまでの経験と藝大に置いてきた作品を信じて結果を待ちました。

最後に、暖かく見守ってくれた家族と高校の担任の先生、新潟でお世話になった絵画教室の先生とどばたでお世話になった先生方。言葉には表せないほど感謝しています。これからもその応援に応えられるよう美術を学び、制作に臨みます。
本当にありがとうございました。

Y.Nさん

合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 日本画専攻
多摩美術大学 絵画学科 日本画専攻
武蔵野美術大学 造形学部 日本画学科
女子美術大学 芸術学部 美術学科 日本画専攻

出身校:晃華学園高等学校

『合格者体験記』

私は一浪の入直から合格する二浪までどばたにお世話になりました。
早めに着彩などを始めたおかげ(高二から)で、現役の頃は描写力も絵の具の扱いも他の同学年の人よりも上でした。
でもそれは早めに始めたからみんなより評価が良かっただけで魅力的な絵を描くという本質的な部分が抜けていました。
現役は1次落ちでした。原因は藝大の紙に翻弄されて色が汚くなってしまったこととデッサン力が足りなかったかったことでした。

一浪では受験の熱が少し冷めてしまい、絵に身が入りませんでした。
結果は2次落ちでした。原因は教授が何を書いて欲しいか汲み取れなかったことでした。ただ何も考えず3点構図で描き、落ちました。
また、物さえ上手く書けばいい絵だと思っていたので何がいい絵なのか理解していませんでした。

二浪では前回と同じ失敗をしないように何をすればいいか考えていました。
どこに置いてある何なのかを意識すると空間が出ました。構図を組むのも苦手だったので参作をクロッキーして小物やリボンの扱い方などを頭に入れました。
また、1番大切なことは『魅力的な絵を描く』事だと感じました。毎課題ごと魅力的な部分を1箇所作る事を意識しました。そしてその部分が一番に見えてくるように他のモチーフを描くことを心がけていました。

本番では野菜が出ました。
モチーフを見てかぼちゃの黄色い華やかさと種と実が絡み合っている感じを表現したいと思いました。
ずっとかぼちゃを書いていたら手前が描き終わらなくて焦りました。
落ちたかもしれないと思いました。

受験が終わって感じることはぐっと引き込まれる魅力的な部分があることと、そこが1番見えてくる絵を求めているのかなと思いました。
思い返してみればかぼちゃは自分なりに魅力的にかけていたと思います。
また、描写力は本当に大切だと感じました。
あればあるだけ自分を助けてくれると思います。
お世話になったどばたの先生方、支えてくれた周りの方々、本当にありがとうございました。

R.Sさん

合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 日本画専攻
東北芸術工科大学 美術科  日本画コース

出身校:千葉県立松戸高等学校

『経験』

自分が受験生活で感じたことを一言で表すなら「得難い経験」だと思います。
やはり浪人をしているので、最初の頃は父から浪人することはまわりの同期と1年分の遅れができることと言われ、毎年毎年この年が最後と言われながら三浪まで来ました。
けしてこの父の意見は間違っているものだとは今も思っていません。ですが、その1年1年を重ねながら自分と向き合っていく中で、今までの自分の甘さ、浅さ、ある種の自分自身の嫌な本質に向き合っていくことで、今までの人生の中で遥かに1年ごとの自分の絵の技術の成長だけでなく、自分の人てしての成長を感じることができました。
浪人というのはできればしたくないことだと思うし、しないにこしたことは無いと思います。ですが、することになった時にただマイナスなところに目を向けるのではなく、その浪人生活で得れる他の人が経験することのできない経験というのをプラスの方向で得ていくことが、なにより「得難い経験」になると思っています。
また、ある意味そう感じさせてくれるのが日本画受験の魅力の一つなのかもと思っています。

最後に少し自分語りをさせて下さい。
実は、私は本当は金銭面的に二浪までしかできないという約束で二浪していました。
結果はもちろん不合格でした。
その時に、すでに自分の受験は終わり一つの挫折と共に別の大学に行くはずでした。その時のぐちゃぐちゃとした気持ちは強く覚えています。
ですが、その時三浪の選択肢を得ることができたのは母と浪人に否定的だった父からの提案でした。浪人生活で積み重ねた努力と結果からくる自分の成長が、両親にとってもう1年頑張る気があるなら応援したいと思わせられるものだったのかなぁと思っています。
自分は今まで本当に運が良かったなぁと思っています。応援してくれる人達が居て、そのなかで、自分の進む道を選択した時、する時に運良く良い人と出会うことが出来てきた人生でした。そんな人生の割には親には不甲斐ない所ばかりを見せてきたなぁと思っています。そんな中でも自分が本気で挑戦してることを応援してくれて、最後に自分が合格を掴む機会をくれた親、全ての人にこれからの行動で返していけたらと思います。
そして、受験の道を歩む選択をしたすべての人へ
あなたの努力がどんな形であれ報われることを願っています。

K.Sさん

合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 日本画専攻

出身校:東京都私立潤徳女子高等学校

『 諦めなければ』

私は、3浪目にどばたに来て受かりました。移ってからは刺激が多い日々で、環境が素晴らしく濃い学びが多くありました。

着彩でいつもの様にモチーフを組みいつもの様に描いて講評を迎えていたら、自分の絵が型にはまっていることに気がつきました。自分が絶対やらないような構図で魅力的な絵を描いている人たちが多くいて刺激を受けました。今まで、構図はこうしないといけない。描写はこうしないといけない。知らない間に固定概念にとらわれていました。そのせいで構図も絵も寂しくなったり見映えがしない構成が多かったです。それからもっと自由に自分にしか描けない様な構図にしようという気持ちで制作に向かいました。最初は上手くいかなくて、分からなくなっていった時もありましたが、逃げずに構成することで絵的な感覚や面白さを見出して頑張りました。
そのおかげで入試の時も自分にしか組めない構図で、その上で魅力的な絵が描けたと思います。

1次試験はパジャント1体でした。
綺麗な柔らかい光に包まれたパジャント。
その状況が表現できるように、とにかく突き進みました。いつも通りにはいかなく大変なことはいっぱい起きましたが、試験会場というのがいつも通りではないので、その場でできる事をやりきりました。

2次試験は、藝大の明るい綺麗な光を浴びた野菜たちに感動しました。とにかく深く考えず直感的にいける!って思ったのをそのまま絵にしようと強く思いました。
構図は開始30分くらいで大体の構成が決まって、画面に描き出した時に自分の中の直感がなにかが違うと思いだし、みんなの絵を見て自分の構成がよくないと思い始めトイレに駆け込みました。
現状の把握とこれからどう進めるかを冷静に判断しました。メンタルを立て直して自席に戻った瞬間またパニックになり、トイレで考えてたことすべて忘れて、またトイレに行っての繰り返しをしていました。(※3浪目) 時間も過ぎていき、最終的に心が折れかけていましたが、絶対諦めたくないと思い、歯を食いしばってとにかく自分を信じて描きました。
1日目終了した後は泣きながら電車に向かいました。こんな調子じゃもうだめなんじゃないか。後悔がたくさんありすぎて自分を責めました。それでもいつもの先生の言葉と自分を信じて次の日に臨みました。
2日目はとにかく描き切ることを第一に手が10本ぐらいあるスピードで描きました。絶対落ちたくない。ここまで来たのにもう一年はやだ。絶対良い絵にする。そのことで頭いっぱいになりながら描きました。
諦めないで描いたら、ダメだと思っていた絵がすごくいい絵に変わって、初めて自分の絵に感動したことを覚えています。諦めなければ、どうにかなるんだと試験でも良い経験ができました。
本当に最後まで諦めないで自分を信じて描けてよかったです。

2月後半、着彩で年に何回かある負のスパイラルに突入することがありました。その時先生に相談した際に、 余計なことを考えずのびのびとモチーフを組み、いける!って思った直感を信じる! と助言をもらって、気を持ち直し入試前最後のデッサン・着彩ともに良い絵を描くことができました。その感覚が試験の絵でも生かされたと思います。

ここに書ききれないほどの勉強になったことが沢山あります。この1年間本当に楽しかったです。
ここまで育ててくれた予備校の先生方には感謝の気持ちでいっぱいです。
また2次試験の整列の時、門の外で応援のプラカードを持ってきてくれた友達本当にム尺エ彑ムナロ凵!

A.Iさん

合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 日本画専攻
多摩美術大学 絵画学科日本画専攻
女子美術大学 芸術学部 美術学科 日本画専攻

出身校:市原中央高等学校

『気持ちのあれこれ』

すいどーばたでは2浪3浪の時にお世になりました。
現役ではがむしゃらに、1浪では理論的に絵を描くことに取り組みました。結果では1次不合格、1浪では1次通過2次不合格という結果となりました。そしてすいどーばたに入学した2浪の初め、新たな環境での制作や、1浪の時に1次通過したプレッシャーなどもあり、見えない不安と常に闘っていて、自信もなく、制作に対する意欲も湧きませんでした。コンクールでも石膏デッサンは常に順位が悪く、さらに自信をなくし、石膏デッサンに苦手意識を持つようになりました。そうこうして本番、苦手位置の苦手逆光。ダブルパンチで焦りました。
結果1次不合格
そこで3浪では自分の気持ちと向き合いながら、石膏デッサンも着彩も苦手を克服できるよう制作に取り組みました。気持ちと向き合う為に日記を書いてみたり、休みの日は友達と一緒に遊んで気持ちの切り替えをしたり、長電話したり、、、たまに制作をサボってみたり。
制作では「前回の課題よりいい絵が描けたら偉い」くらいの気持ちで、深刻に「受かる絵かないと」と考えたり、コンクールの順位を気にしすぎないようにしていました。そうして夏期終わりには石膏デッサンの苦手意識も薄れ、逆光位置の楽しさにも気づけました。
冬期に入り石膏デッサンの形どりも慎重になり、それに付随して着彩の形どりも少しずつ良くなっていきました。入直でも同じ気持ちで取り組めたら良かったのですが、私大対策から戻ってきたら他の人の絵が上手に見えてしまい、自分の絵が下手くそに思えてきました。自分では落ち着いているつもりでも心は焦っていたので、他の人の絵は見ないようにして、自分の絵に集中するように心掛けました。着彩は一年を通して構図に対する苦手意識はあったものの、事前情報なしで出てくるモチーフ(コンクールのときや、モチーフ表に記載がない場合)の時は上手くいくことに最後の最後で気がつけたので、デッサンや着彩に対する不安もなくなり1次も2次も楽な気持ちでいつも通り描くことができました。

この一年を通して自分の気持ちと向き合うことが大切だったんだなと感じました。もちろん技量は必要ですが、本番で大事なのは直前でどれだけ自信を持てるか、いつも通りの気持ちで描けるかだと思います。指導してくださった講師の方々、弱音を吐いたら慰めてくれたり遊んでくれた友人達、いつも通りに接してくれた家族には感謝しかないです。
本当にありがとうございました。

S.Kさん

合格大学:東京藝術大学 美術学部 絵画科 日本画専攻
多摩美術大学 絵画学科日本画専攻
女子美術大学 芸術学部 美術学科 日本画専攻

『受験記』

ランドセルを置いたばかりの12歳の春。私が初めてどばたに来たのはちょうど10年前のことです。初めは学校の図工の授業の延長のようなつもりで通っていましたが、藝大日本画を受験すると決めた高三からは真剣に受験対策に向き合いました。長くお世話になったどばたですが、特にどばた日本画には現役から4浪で合格するまでの5年間お世話になりました。

私は浪人生活後半は「どうしてあと一歩が届かないんだろう」ということに悩まされました。普段のどばたの絵で良い評価や順位をいただけた時でも参作にできるようなレベルの絵は描けていなかったし、「25人の中に入る」という事の厳しさを感じていました。その一歩があまりに遠く高い壁に思え、受かっていく人の絵と自分の絵とでは何か明確な差があると感じつつも具体的にそれが何なのかが分かりませんでした。現役、1浪と2浪の途中までは一枚描くごとに自分の絵が成長できている実感があり、技術も拙かった分とにかく上手くなりたい!という向上心を持って元気に楽しく描けていましたが、浪人後半ではある程度描けるようになった事でなかなか絵の伸びを実感できず、むしろ昔の方が魅力的な絵だったのではないか?と思ってしまうような絵を描いて、不安になることもありました。長く続くスランプの中で4浪の今年を受験ラストチャンスにしようと決めて挑みました。

今年はどこかいつもと違う年でした。これが最後なんだという思いが一枚一枚の絵に緊張感を持たせました。とにかく目の前のモチーフや空気感を自分にとって一番かっこよく、そして美しく描こうという思いで固定観念に囚われず新しい事にも挑戦しました。今までやらなかった背景付きのデッサン、着彩やセオリーから外れる構図やトリミングも良いと思ったらやってみました。失敗を恐れず挑戦しましたが、難しいことをやっているから失敗しても仕方ない、上手くいかなくても今回はいいやとは諦めないで、常に目の前の絵を良い絵にできるように全力を尽くそうと自分に言い聞かせました。

そんな時に去年の合格者の本番の絵を見て、絵の全体感を保ちつつも魚の鱗の一枚一枚まで熱量を持って描いてあり自分の中で気づくことがありました。それは浪人年数が増えるごとに私は言葉で考える事が多くなり、目の前のモチーフを大切にする姿勢が薄れていたということです。これは手前でこれは奥、ここは光側でここは影側、このモチーフは目立って、これは脇役で…。絵を良くするのを助けてくれる言葉ではありますが、何度も繰り返している内に言葉が先に来てしまい本来大切だったはずの観察が疎かになっていました。絵が上手くいかないと、とにかく「分からない」ことが不安で、分かりやすい言葉に頼りすぎました。今年は出来るだけ誠実にモチーフを観察し、泥臭く地に足をつけて描こうと決めました。すぐに簡単にできる事ではなく一年通して自分の課題にはなりましたが、入直の頃は納得のいく絵を描けるようになりました。試験でも、どばたとはまた違う藝大の教室ならではの空気感を感じながら楽しく描く事ができたと思います。

最後になりましたが指導してくださった全ての先生方や応援してくれた家族、友人、恵まれたどばたの環境をいつも整えてくださっていた助手さんや事務の方に深く感謝しています。先生が1、2浪の頃自主練も丁寧に見てくださり、3浪の試験直前デッサンがボロボロになった時も見捨てずに何度も面談してくださったり、私大を受ける時親身に相談に乗ってくださったり、たくさん支えていただきました。本当にありがとうございました。